契約愛人8(会×古)
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●第4章-1~
&size(10){(古泉モノローグ)};~
~
新川さんの車でアパートまで送ってもらって、やっと帰宅す...
結果はもちろん白。後ろ暗いことなど欠片もないのだから当...
「ありがとうございました」~
助手席から降りて一礼すると、新川さんは穏やかに微笑んで...
いつもと同じ。だけどなぜか今日ばかりは見えない壁を感じ...
重たい気分を抱えて、階段を上がって、見慣れたドアの前に...
窓からこぼれる灯りが妙に心を和ませ、でも同時に別なもや...
「……」~
小さく息を吸い込み、勢いよくドアを引く。~
部屋の中から溢れだす甘い香り。クリームのにおいだ。~
「……遅かったじゃないか、古泉」~
不満気たっぷりの声が、台所から響いてきた。~
「すみません、電話を切ったあと急に引き止められて……」~
「それならもう一度電話をしろ」~
会長はキッチンから顔を出すと、僕を見つめて軽くにらんだ...
鞄を下ろし制服を着替え、再び顔を出すと、会長は湯気のた...
「なんだ? 着替えてきたなら手伝え」~
「会長。エプロン似合ってますよ」~
「ふふふ、いいだろう。下級生の愛らしい女子に作らせたもの...
「だけど、着てあげるんですね」~
「お前にしか見せんがな」~
夕食はクリームシチューだった。小麦粉とバターと牛乳を混...
その苦労の甲斐あって、今まで食べたことのない素晴らしい...
「……本当に美味しい。……こんな美味しいシチューは初めてです」~
「そうだろうそうだろう。……っていうかお前、今までどんなも...
会長はシチューにちぎったパンを押し付けながら苦笑する。~
「そうですね……食には疎くて」~
「食は大事だぞ古泉。もうしばらくすればお前だって青春ニキ...
「生徒会室で女生徒を集めて、美容講座を開いているという噂...
「む。……どこで聞いた?」~
否定しないんだ。~
僕はおかしくなってクスクス笑った。会長は大体いつもこん...
彼は彼なりに学校を楽しんでいる。~
自分の意思でない、他人が用意した椅子に腰掛け、そこでも...
あれだけ素行が悪かったのにもかかわらず、今では男子生徒...
もう以前のような人ではないのだ。~
どうしたら森さん達にわかってもらえるだろう。~
「あれは……黄緑くんがあまりにもスキンケアについて無知なの...
「……黄緑さんか……」~
それは無頓着そうだ。僕はますますおかしくなって笑い続け...
「今日はよく笑うな」~
缶ビールを口に運びながら、会長も口元をゆがめる。~
「そうでしょうか……? しかしその講座、一度拝見させていた...
「実践する気のない奴には聴講させん、それより古泉、左腕ど...
「えっ?」~
僕は自分の腕を見下ろす。注射のあとに脱脂綿をあててはい...
会長はおどけて額に指をあてながら唸るように呟く。~
「見える、見えるぞ、古泉。……予防接種でもしてきたのか?」~
言い当てられた僕は、さすがに少し顔色を変えた。~
「……どうして?」~
「帰宅してきたときにYシャツから透けて見えただけだ。機関...
「はは……。血液検査を少ししただけです」~
「そうか」~
会長はもう一口ビールを飲む。~
「なんかあったんじゃないならいいさ」~
「会長も珍しいですね……今日は、妙に探ろうとして……」~
いつもならそんなこと言わないのに。僕がどこで何を食べて...
声を潜めた僕に、会長は苦笑をにじませながら溜息をついた。~
「お前のほうが今日は妙に見えるけどな。おどおどと帰ってき...
「……」~
「その注射跡もそんなに時間経っていないんじゃないか? 機...
「……」~
僕は会長を見つめた。~
彼は限られた情報の中から面白がって推理してみせているだ...
会長は見つめる僕を呆れたように見ながら、つまらなさそう...
「……俺の通っていたあの店にサツが入ったのと関係あったりす...
「ご存知だったのですか……」~
「ご存知もなにも……」~
大仰に息をついて、テーブルの隅にあった携帯を手に取り、...
「会わずともメールのやり取りくらいはしているダチもいるん...
「ミス?」~
「店がヤクの売買を容認していたわけじゃねーよ。ただ店に来...
「……なるほど」~
会長は悔しそうだった。ニヒルな態度でごまかしているけれ...
会長が僕に機関のことを聞かないのと同じくらい、僕もその...
だけど彼にとってそこが以前の居場所だったことはなんとな...
「まあマスターがバカなんだけどな。あんなヤツ雇うな、って...
携帯を握り締めて、会長は軽く唇を噛む。~
「……そうだったんですか」~
「店はもうダメだな。店員がヤクの売買に携わってたって話じ...
「……」~
会長は額に手のひらを当てて、もうひとつ大きな溜息をつい...
言葉にできない思いが少しだけ空気で伝わる。~
あの店に関わらないと約束したことを、今までに彼は後悔し...
「……」~
かける言葉も思いつかない。黙って見守るしかない僕を、会...
「お前にも迷惑をかけたみたいだな、……薬物の検査をされてき...
「……」~
察しがよすぎるのも考えものだ。僕は答えないことで肯定の...
会長は傷ついたように肩を落とし、情けない顔をしてみせた。~
「あの多丸ってやつは大喜びだろうな。俺がまたあそこに通い...
「会長が薬物などしていないことは僕が保障しておきました、...
僕は急いでつけ加える。それだけは何度も念押ししたのだ。~
こんな失礼な疑惑、彼に伝えるのも忍びなかったから。~
けれど会長は呆れたような表情を僕に向けて、くだらなさそ...
「そいつは嬉しいな……だけど、古泉。お前は俺のことをどれだ...
「それは……」~
その店がどこにあるのかさえ僕は知らない。彼がそこでどん...
会長は缶ビールの中身を全部飲み干すと、立ち上がり、大き...
そのまま隣の部屋に向かい、出しっぱなしにしてあったゲー...
~
[[ →→つづき(契約愛人9)>http://haruhi.kazeki.net/?%E5%A...
終了行:
●第4章-1~
&size(10){(古泉モノローグ)};~
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新川さんの車でアパートまで送ってもらって、やっと帰宅す...
結果はもちろん白。後ろ暗いことなど欠片もないのだから当...
「ありがとうございました」~
助手席から降りて一礼すると、新川さんは穏やかに微笑んで...
いつもと同じ。だけどなぜか今日ばかりは見えない壁を感じ...
重たい気分を抱えて、階段を上がって、見慣れたドアの前に...
窓からこぼれる灯りが妙に心を和ませ、でも同時に別なもや...
「……」~
小さく息を吸い込み、勢いよくドアを引く。~
部屋の中から溢れだす甘い香り。クリームのにおいだ。~
「……遅かったじゃないか、古泉」~
不満気たっぷりの声が、台所から響いてきた。~
「すみません、電話を切ったあと急に引き止められて……」~
「それならもう一度電話をしろ」~
会長はキッチンから顔を出すと、僕を見つめて軽くにらんだ...
鞄を下ろし制服を着替え、再び顔を出すと、会長は湯気のた...
「なんだ? 着替えてきたなら手伝え」~
「会長。エプロン似合ってますよ」~
「ふふふ、いいだろう。下級生の愛らしい女子に作らせたもの...
「だけど、着てあげるんですね」~
「お前にしか見せんがな」~
夕食はクリームシチューだった。小麦粉とバターと牛乳を混...
その苦労の甲斐あって、今まで食べたことのない素晴らしい...
「……本当に美味しい。……こんな美味しいシチューは初めてです」~
「そうだろうそうだろう。……っていうかお前、今までどんなも...
会長はシチューにちぎったパンを押し付けながら苦笑する。~
「そうですね……食には疎くて」~
「食は大事だぞ古泉。もうしばらくすればお前だって青春ニキ...
「生徒会室で女生徒を集めて、美容講座を開いているという噂...
「む。……どこで聞いた?」~
否定しないんだ。~
僕はおかしくなってクスクス笑った。会長は大体いつもこん...
彼は彼なりに学校を楽しんでいる。~
自分の意思でない、他人が用意した椅子に腰掛け、そこでも...
あれだけ素行が悪かったのにもかかわらず、今では男子生徒...
もう以前のような人ではないのだ。~
どうしたら森さん達にわかってもらえるだろう。~
「あれは……黄緑くんがあまりにもスキンケアについて無知なの...
「……黄緑さんか……」~
それは無頓着そうだ。僕はますますおかしくなって笑い続け...
「今日はよく笑うな」~
缶ビールを口に運びながら、会長も口元をゆがめる。~
「そうでしょうか……? しかしその講座、一度拝見させていた...
「実践する気のない奴には聴講させん、それより古泉、左腕ど...
「えっ?」~
僕は自分の腕を見下ろす。注射のあとに脱脂綿をあててはい...
会長はおどけて額に指をあてながら唸るように呟く。~
「見える、見えるぞ、古泉。……予防接種でもしてきたのか?」~
言い当てられた僕は、さすがに少し顔色を変えた。~
「……どうして?」~
「帰宅してきたときにYシャツから透けて見えただけだ。機関...
「はは……。血液検査を少ししただけです」~
「そうか」~
会長はもう一口ビールを飲む。~
「なんかあったんじゃないならいいさ」~
「会長も珍しいですね……今日は、妙に探ろうとして……」~
いつもならそんなこと言わないのに。僕がどこで何を食べて...
声を潜めた僕に、会長は苦笑をにじませながら溜息をついた。~
「お前のほうが今日は妙に見えるけどな。おどおどと帰ってき...
「……」~
「その注射跡もそんなに時間経っていないんじゃないか? 機...
「……」~
僕は会長を見つめた。~
彼は限られた情報の中から面白がって推理してみせているだ...
会長は見つめる僕を呆れたように見ながら、つまらなさそう...
「……俺の通っていたあの店にサツが入ったのと関係あったりす...
「ご存知だったのですか……」~
「ご存知もなにも……」~
大仰に息をついて、テーブルの隅にあった携帯を手に取り、...
「会わずともメールのやり取りくらいはしているダチもいるん...
「ミス?」~
「店がヤクの売買を容認していたわけじゃねーよ。ただ店に来...
「……なるほど」~
会長は悔しそうだった。ニヒルな態度でごまかしているけれ...
会長が僕に機関のことを聞かないのと同じくらい、僕もその...
だけど彼にとってそこが以前の居場所だったことはなんとな...
「まあマスターがバカなんだけどな。あんなヤツ雇うな、って...
携帯を握り締めて、会長は軽く唇を噛む。~
「……そうだったんですか」~
「店はもうダメだな。店員がヤクの売買に携わってたって話じ...
「……」~
会長は額に手のひらを当てて、もうひとつ大きな溜息をつい...
言葉にできない思いが少しだけ空気で伝わる。~
あの店に関わらないと約束したことを、今までに彼は後悔し...
「……」~
かける言葉も思いつかない。黙って見守るしかない僕を、会...
「お前にも迷惑をかけたみたいだな、……薬物の検査をされてき...
「……」~
察しがよすぎるのも考えものだ。僕は答えないことで肯定の...
会長は傷ついたように肩を落とし、情けない顔をしてみせた。~
「あの多丸ってやつは大喜びだろうな。俺がまたあそこに通い...
「会長が薬物などしていないことは僕が保障しておきました、...
僕は急いでつけ加える。それだけは何度も念押ししたのだ。~
こんな失礼な疑惑、彼に伝えるのも忍びなかったから。~
けれど会長は呆れたような表情を僕に向けて、くだらなさそ...
「そいつは嬉しいな……だけど、古泉。お前は俺のことをどれだ...
「それは……」~
その店がどこにあるのかさえ僕は知らない。彼がそこでどん...
会長は缶ビールの中身を全部飲み干すと、立ち上がり、大き...
そのまま隣の部屋に向かい、出しっぱなしにしてあったゲー...
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