契約愛人18(会×古)
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●第8章-1~
&size(10){(古泉モノローグ)};~
~
検査室から戻ってこない彼を、団長殿、朝比奈さんと僕は会...
3人とも、この3日間の心労から開放され、上機嫌だった。~
特に涼宮さんの笑顔は晴れやかで、病院から北高まで戻るバ...
ずっと聞いていたかったけれど無情にもバスは目的地に達し...
去っていく二人を見送り、僕は反対側に歩き出す。そして目...
「お帰り」~
運転席には多丸さんがいた。最近なにかと僕に構ってくれる...
多分その理由は会長を気に入っているからだ。僕と会長の関...
「ありがとうございます。ただいま、です」~
後部席から愛想笑いを浮かべると、多丸さんは人懐こい笑み...
~
~
機関でもろもろの報告書を仕上げ、それから年末イベントの...
気づけばもう21時を過ぎていて、携帯には涼宮さんから留...
が、その辺が限界だった。~
今までの緊張がようやく緩んだせいだろうか。~
帰りの車を新川さんが出してくれるというので、そのお言葉...
気づけば機関の仮眠室で布団を被って眠り込んでいて、時計...
「わっ」~
慌てて起き上がる。が、体に力が入らなかった。~
……まだまだこのまま眠っていたい、と体が訴えてる。~
もうこのまま朝まで眠って、ここから学校へ行こうかという...
布団に入ったまま、会長にごめんなさいメールを送り、結局...
~
けれど、眠ろうと決めたはずなのに、今度はなかなか寝付か...
体が重くてけだるいのは変わらないのに、頭だけが冴えきっ...
いつもならすぐ隣にあるはずの暖かくて、僕より大きな体が...
一番辛かったあの日、会長の腕の中はとても暖かった。心配...
考えはじめたら、余計に気になってきて、ますます眠気がど...
~
疲れている体を引きずるようにして、僕は機関の建物を出て...
この時間に高校生が一人でタクシーを使うことは避けるべき...
流れていく車窓の明かり。数日前、会長と並んで乗ったこと...
気づけば、僕は自分を軽く責めていた。~
どうして寝てしまったりしたのだろう。~
会長はきっと僕を待ってくれていた。~
あの人にもたくさん心配をさせたのだ。それを知っているく...
~
思えば僕はいつも、あの人の気持ちを考えたことなんてあま...
彼にあって、僕にない、異質な部分ばかりをずっと意識して...
でも彼はそうではなくて。……僕はもしかすると、いろんなこ...
~
苦く胸に広がり、焦燥感を伴う感情が、その時の僕の心にあ...
何かを早く気づかねばならない。~
誰かが心の中でそう叫ぶ。~
けれどそれが何かなどという答えは、欠片も得られなかった。~
~
アパートに辿り着く。~
鍵を開けて部屋に入り、明かりをつけると、キッチンのテー...
それから綺麗な鉢植えがテーブルの中央に飾られていた。~
ポインセチアだ。赤く色づいた葉が緑の葉に重なって、とて...
かつてこの部屋にこんな綺麗なものがあったことがないので...
「……んー……古泉かー……」~
玄関を開けたり閉めたり、灯りをつけたりしたので起こして...
僕はベッドに歩み寄り声をかけた。~
「すみません……遅くなりました」~
「……んー……ってか、お前さっき帰らんってメール送ってきたろ」~
会長はベッドにうつぶせになりながら、眉間に深いシワを寄...
「気が変わりました」~
「そうか」~
ぐう。~
枕に顔を埋めてしまった。眠ってしまったのだろうか。~
キッチンの食事には若干未練があったけれど、空腹を満たす...
「んー……」~
寝ぼけながらも場所を空けてくれる会長の腕の中に潜り込む。~
「ケーキ美味しかったです、会長」~
眠そうな彼には迷惑かもしれないけれど、やっと戻れたこと...
「……それから色々心配かけて……」~
「まったくだ」~
掠れた声が響き、会長の両腕が僕の背中にまわって、額に口...
真似をして、僕も背中に腕を回してみる。途端、会長が変な...
「……どうした、古泉?」~
「えっ……いえ、……その、なんとなく」~
尋ねられると……あせる。腕を解こうとすると、突然会長の体...
「……!!」~
「……誘ってる? もしかして」~
「と……とんでもありません……」~
顔をそむける。いや、その……そういうんじゃなくって。その。~
「ならいい……」~
そう呟いて、会長はそのままべたんと潰れてきた。……僕を下...
しかも首筋をはむはむと唇でなぞってくる。く、……くすぐっ...
「か、会長っ……や、めっ……」~
「……なんでこんな夜中に……元気なんだ。早く寝ろ、眠い」~
心底迷惑そうな声で呟かれた。~
「じゃあ寝かせてくださいませんか」~
「……むー」~
会長は再び僕の横に寝転ぶと、背中を押して僕を自分の胸に...
これ以上、彼の安眠を妨げないように息を殺して僕は黙り込...
まぶたを閉じると、眠気はさざなみのように優しく押し寄せ...
もうあまり寝ている時間は無いのだけど、でもうとうとと心...
~
~
●第8章-2~
~
無理をしてまでも会長の元に戻ってよかったと、後から僕は...
明けて22日、23日と二日続けて、アパートには戻れない...
彼が意識不明であった3日間、機関の動きもSOS団の動き...
沈静していた涼宮さんの気分は、一気に上昇気流に乗って、...
それらが終われば、機関に戻り、年末の準備やさまざまな会...
新学期が始まって以来、機関の重要な任につく者の数も少し...
皆の意見が白熱してあらぬ方向に向かわぬように、軌道修正...
SOS団を守るために。~
涼宮さんや彼が、不快な目にもうあわぬように。~
僕が守る。……もうあんな思いはごめんだ。絶対に。~
~
そんなこんなで結局二日もアパートに戻ることはできなくて...
冷たい建物の静寂に包まれた廊下。深夜1時。~
自動販売機から落ちてきた缶コーヒーで暖をとりつつ、ぼん...
『わかった。じゃあもう寝るから、もう夜中に起こしてくれる...
メールの字面を見て、笑みが零れる。~
けして広くはないあの部屋の、狭いベッドに一人で横たわる...
あの人も寂しいって思うのだろうか。~
彼は、僕よりもずっと強くて、飄々としていて、何があって...
だからそんなことは無いのかもしれない。~
弱いのは……僕のほうだ。~
暗い天井を見上げて、そんなことを考えていたら、多丸さん...
「なんて顔してんだ、古泉」~
「えっ」~
驚いて顔を起こす。ニヤニヤ彼は笑って、僕の隣に腰掛けた。~
「疲れてんじゃないか? 帰ってないんだろ?」~
「いえ平気です。それよりさっきの会議で出た話、どう思いま...
「……んー、まあ、それは森さん達に任せておこう。お前はSO...
「ええ、もちろん大事なのはSOS団です」~
僕が頷くと、多丸さんは足を組むと、天井に向かって大きく...
その仕草を見ていると、急にまた笑顔がこちらを向いた。~
「で、明日はどうするんだ、古泉」~
「明日、ですか? 明日は終業式のあと、鍋パーティーです。...
「じゃなくて、俺があげた休みのこと言ってるんだけど」~
「……!」~
忘れてた。~
……色んなことがありすぎて、全くもって覚えていなかった。~
「……おまえなぁ」~
多丸さんの指に額を小突かれ、僕は苦笑する。~
「しかし明日も会議はあるんじゃないんですか?」~
「何言ってんだよ。明日は休みだ。何があってもね。閉鎖空間...
「……そうなんですか?」~
介入する勢力の存在に機関が沸いているこの状態で、完全休...
「明日はクリスマスで終業式でそこから先は冬休みだ。そうだ...
「え、ええ。北高はそうです」~
「だから、24時間の休みをあげるって言ってるんだ。25日...
「はぁ……」~
そう言われても、すぐには想像できない。~
機関からも、SOS団からも、解放される日。~
僕は自分に言い聞かせてみた。僕からその二つの因子を抜け...
「……うーん」~
「何を悩むかな?」~
「いえ、自分のことなのになかなか想像がつかないものですね...
「ばーか。会長にでもべったり甘えてくればいいんだよ。あい...
「……多丸さん、最近いやに会長の肩もちますよね……」~
「あいつ面白いしね。ゲイじゃなかったら友達になりたかった...
「……」~
非常に言い返したくなったがうまく思いつかない。~
しかしその言葉でようやく、会長とのんびり過ごすという選...
といっても、その時の僕は、普段呼び出しもない暇な休日に...
でも二日も会えず、彼との距離を少々切なく感じていた僕に...
「そうですね……会長にも伝えておきましょう。先日のお礼もち...
「言ってなかったのかよ」~
「え、ええ……」~
そういえばどうして言わずにいたのだったか。思い出せない。~
僕は椅子から立ち上がり、多丸さんに礼をした。~
「電話してきます、ありがとうございました」~
「おー、いっといで」~
同じく立ち上がり、多丸さんは元きた廊下を戻っていった。...
真冬の夜空はしんと冷たく、呼吸が白く曇って空に流れてい...
空には真っ白で大きな満月。星は見えなかった。~
上着を被ってくればよかったと後悔しながら、携帯を耳にあ...
『……むう、なんだ?』~
不機嫌きわまりない声だった。どうやらもう眠っていたらし...
「すみません、起こしてしまいましたね」~
『さっきもう寝るとメールで送った記憶があるが』~
そうでした。~
「……すみません」~
『なんだ? 帰れることにでもなったのか?』~
「いいえ、今夜はもう戻れないと思います。これから次の会議...
『へぇ……、知っているか? 古泉。22時以降は18歳未満は働い...
「存じてます。だからバイト代が貰えないんです、困りますよ...
『……それはぼったくられてないか、お前?』~
「冗談ですよ」~
僕は笑った。会長も電話の向こうで苦笑いするのがわかる。~
彼と話すと肩の力が抜けて、少しだけ心地よい。もっと味わ...
「会長、明日のことなんですが、予定などありますか?」~
『予定? 俺の?』~
「はい、僕は前にもお話した通り、SOS団の皆さんと多分夜...
『……ほう』~
興味を持ってもらえたらしい。面倒そうだった彼の口調が少...
『明日は帰ってこられそうなのか?』~
「実はお休みを頂いたんです。明日、SOS団の活動が終わっ...
『クリスマス休暇?』~
「そのようなものです」~
答えて僕は微笑した。口に出しながら実感が沸いてくる。~
明日は休みなんだ。もう1年以上も前から、否、涼宮ハルヒ...
会長と明日の約束ができる、それが、休み、ということなの...
『そうか。まあでも遅くなるんだろうな? それに今からじゃ...
「よ、予約ですか? そうですね、時間はちょっと。……すみま...
『いや。俺も予定が一応あるからな。別に構わん。飯も食うだ...
「そうなんですか?」~
『俺にだって用事くらいあるぞ? 生徒会の面々と食事に行こ...
「えっ!」~
それって。……以前に頂いたビラを思い出す。1年有志じゃな...
『特別ゲストにしてくれるというから、行ってみるだけだ。……...
「……少し驚きましたが、いえ、……とんでもないです」~
その後に約束を入れてもいいのでしょうか、と問おうとした...
「それではお互いの予定が終わったら、メールで連絡をすると...
『抜けて……は無理か』~
「すみません」~
『わかった、そうしよう。……じゃあ俺はもう寝るぞ』~
「はい」~
『おやすみ』~
会長が優しく囁く。名残惜しさを感じながら、僕も答えた。~
「おやすみなさい」~
電話が途切れる。~
刹那の余韻が過ぎて、僕は現実に戻った。携帯に表示された...
慌てて建物に駆け戻る僕を、廊下の隅で多丸さんがニヤニヤ...
~
[[ →→つづき(契約愛人19)>http://haruhi.kazeki.net/?%E5...
~
- このお話で会古にハマリました。スレで叩かれて続き上げづ...
- この2人が可愛くて仕方ないです!ラスト楽しみにしてます...
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●第8章-1~
&size(10){(古泉モノローグ)};~
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検査室から戻ってこない彼を、団長殿、朝比奈さんと僕は会...
3人とも、この3日間の心労から開放され、上機嫌だった。~
特に涼宮さんの笑顔は晴れやかで、病院から北高まで戻るバ...
ずっと聞いていたかったけれど無情にもバスは目的地に達し...
去っていく二人を見送り、僕は反対側に歩き出す。そして目...
「お帰り」~
運転席には多丸さんがいた。最近なにかと僕に構ってくれる...
多分その理由は会長を気に入っているからだ。僕と会長の関...
「ありがとうございます。ただいま、です」~
後部席から愛想笑いを浮かべると、多丸さんは人懐こい笑み...
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機関でもろもろの報告書を仕上げ、それから年末イベントの...
気づけばもう21時を過ぎていて、携帯には涼宮さんから留...
が、その辺が限界だった。~
今までの緊張がようやく緩んだせいだろうか。~
帰りの車を新川さんが出してくれるというので、そのお言葉...
気づけば機関の仮眠室で布団を被って眠り込んでいて、時計...
「わっ」~
慌てて起き上がる。が、体に力が入らなかった。~
……まだまだこのまま眠っていたい、と体が訴えてる。~
もうこのまま朝まで眠って、ここから学校へ行こうかという...
布団に入ったまま、会長にごめんなさいメールを送り、結局...
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けれど、眠ろうと決めたはずなのに、今度はなかなか寝付か...
体が重くてけだるいのは変わらないのに、頭だけが冴えきっ...
いつもならすぐ隣にあるはずの暖かくて、僕より大きな体が...
一番辛かったあの日、会長の腕の中はとても暖かった。心配...
考えはじめたら、余計に気になってきて、ますます眠気がど...
~
疲れている体を引きずるようにして、僕は機関の建物を出て...
この時間に高校生が一人でタクシーを使うことは避けるべき...
流れていく車窓の明かり。数日前、会長と並んで乗ったこと...
気づけば、僕は自分を軽く責めていた。~
どうして寝てしまったりしたのだろう。~
会長はきっと僕を待ってくれていた。~
あの人にもたくさん心配をさせたのだ。それを知っているく...
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思えば僕はいつも、あの人の気持ちを考えたことなんてあま...
彼にあって、僕にない、異質な部分ばかりをずっと意識して...
でも彼はそうではなくて。……僕はもしかすると、いろんなこ...
~
苦く胸に広がり、焦燥感を伴う感情が、その時の僕の心にあ...
何かを早く気づかねばならない。~
誰かが心の中でそう叫ぶ。~
けれどそれが何かなどという答えは、欠片も得られなかった。~
~
アパートに辿り着く。~
鍵を開けて部屋に入り、明かりをつけると、キッチンのテー...
それから綺麗な鉢植えがテーブルの中央に飾られていた。~
ポインセチアだ。赤く色づいた葉が緑の葉に重なって、とて...
かつてこの部屋にこんな綺麗なものがあったことがないので...
「……んー……古泉かー……」~
玄関を開けたり閉めたり、灯りをつけたりしたので起こして...
僕はベッドに歩み寄り声をかけた。~
「すみません……遅くなりました」~
「……んー……ってか、お前さっき帰らんってメール送ってきたろ」~
会長はベッドにうつぶせになりながら、眉間に深いシワを寄...
「気が変わりました」~
「そうか」~
ぐう。~
枕に顔を埋めてしまった。眠ってしまったのだろうか。~
キッチンの食事には若干未練があったけれど、空腹を満たす...
「んー……」~
寝ぼけながらも場所を空けてくれる会長の腕の中に潜り込む。~
「ケーキ美味しかったです、会長」~
眠そうな彼には迷惑かもしれないけれど、やっと戻れたこと...
「……それから色々心配かけて……」~
「まったくだ」~
掠れた声が響き、会長の両腕が僕の背中にまわって、額に口...
真似をして、僕も背中に腕を回してみる。途端、会長が変な...
「……どうした、古泉?」~
「えっ……いえ、……その、なんとなく」~
尋ねられると……あせる。腕を解こうとすると、突然会長の体...
「……!!」~
「……誘ってる? もしかして」~
「と……とんでもありません……」~
顔をそむける。いや、その……そういうんじゃなくって。その。~
「ならいい……」~
そう呟いて、会長はそのままべたんと潰れてきた。……僕を下...
しかも首筋をはむはむと唇でなぞってくる。く、……くすぐっ...
「か、会長っ……や、めっ……」~
「……なんでこんな夜中に……元気なんだ。早く寝ろ、眠い」~
心底迷惑そうな声で呟かれた。~
「じゃあ寝かせてくださいませんか」~
「……むー」~
会長は再び僕の横に寝転ぶと、背中を押して僕を自分の胸に...
これ以上、彼の安眠を妨げないように息を殺して僕は黙り込...
まぶたを閉じると、眠気はさざなみのように優しく押し寄せ...
もうあまり寝ている時間は無いのだけど、でもうとうとと心...
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●第8章-2~
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無理をしてまでも会長の元に戻ってよかったと、後から僕は...
明けて22日、23日と二日続けて、アパートには戻れない...
彼が意識不明であった3日間、機関の動きもSOS団の動き...
沈静していた涼宮さんの気分は、一気に上昇気流に乗って、...
それらが終われば、機関に戻り、年末の準備やさまざまな会...
新学期が始まって以来、機関の重要な任につく者の数も少し...
皆の意見が白熱してあらぬ方向に向かわぬように、軌道修正...
SOS団を守るために。~
涼宮さんや彼が、不快な目にもうあわぬように。~
僕が守る。……もうあんな思いはごめんだ。絶対に。~
~
そんなこんなで結局二日もアパートに戻ることはできなくて...
冷たい建物の静寂に包まれた廊下。深夜1時。~
自動販売機から落ちてきた缶コーヒーで暖をとりつつ、ぼん...
『わかった。じゃあもう寝るから、もう夜中に起こしてくれる...
メールの字面を見て、笑みが零れる。~
けして広くはないあの部屋の、狭いベッドに一人で横たわる...
あの人も寂しいって思うのだろうか。~
彼は、僕よりもずっと強くて、飄々としていて、何があって...
だからそんなことは無いのかもしれない。~
弱いのは……僕のほうだ。~
暗い天井を見上げて、そんなことを考えていたら、多丸さん...
「なんて顔してんだ、古泉」~
「えっ」~
驚いて顔を起こす。ニヤニヤ彼は笑って、僕の隣に腰掛けた。~
「疲れてんじゃないか? 帰ってないんだろ?」~
「いえ平気です。それよりさっきの会議で出た話、どう思いま...
「……んー、まあ、それは森さん達に任せておこう。お前はSO...
「ええ、もちろん大事なのはSOS団です」~
僕が頷くと、多丸さんは足を組むと、天井に向かって大きく...
その仕草を見ていると、急にまた笑顔がこちらを向いた。~
「で、明日はどうするんだ、古泉」~
「明日、ですか? 明日は終業式のあと、鍋パーティーです。...
「じゃなくて、俺があげた休みのこと言ってるんだけど」~
「……!」~
忘れてた。~
……色んなことがありすぎて、全くもって覚えていなかった。~
「……おまえなぁ」~
多丸さんの指に額を小突かれ、僕は苦笑する。~
「しかし明日も会議はあるんじゃないんですか?」~
「何言ってんだよ。明日は休みだ。何があってもね。閉鎖空間...
「……そうなんですか?」~
介入する勢力の存在に機関が沸いているこの状態で、完全休...
「明日はクリスマスで終業式でそこから先は冬休みだ。そうだ...
「え、ええ。北高はそうです」~
「だから、24時間の休みをあげるって言ってるんだ。25日...
「はぁ……」~
そう言われても、すぐには想像できない。~
機関からも、SOS団からも、解放される日。~
僕は自分に言い聞かせてみた。僕からその二つの因子を抜け...
「……うーん」~
「何を悩むかな?」~
「いえ、自分のことなのになかなか想像がつかないものですね...
「ばーか。会長にでもべったり甘えてくればいいんだよ。あい...
「……多丸さん、最近いやに会長の肩もちますよね……」~
「あいつ面白いしね。ゲイじゃなかったら友達になりたかった...
「……」~
非常に言い返したくなったがうまく思いつかない。~
しかしその言葉でようやく、会長とのんびり過ごすという選...
といっても、その時の僕は、普段呼び出しもない暇な休日に...
でも二日も会えず、彼との距離を少々切なく感じていた僕に...
「そうですね……会長にも伝えておきましょう。先日のお礼もち...
「言ってなかったのかよ」~
「え、ええ……」~
そういえばどうして言わずにいたのだったか。思い出せない。~
僕は椅子から立ち上がり、多丸さんに礼をした。~
「電話してきます、ありがとうございました」~
「おー、いっといで」~
同じく立ち上がり、多丸さんは元きた廊下を戻っていった。...
真冬の夜空はしんと冷たく、呼吸が白く曇って空に流れてい...
空には真っ白で大きな満月。星は見えなかった。~
上着を被ってくればよかったと後悔しながら、携帯を耳にあ...
『……むう、なんだ?』~
不機嫌きわまりない声だった。どうやらもう眠っていたらし...
「すみません、起こしてしまいましたね」~
『さっきもう寝るとメールで送った記憶があるが』~
そうでした。~
「……すみません」~
『なんだ? 帰れることにでもなったのか?』~
「いいえ、今夜はもう戻れないと思います。これから次の会議...
『へぇ……、知っているか? 古泉。22時以降は18歳未満は働い...
「存じてます。だからバイト代が貰えないんです、困りますよ...
『……それはぼったくられてないか、お前?』~
「冗談ですよ」~
僕は笑った。会長も電話の向こうで苦笑いするのがわかる。~
彼と話すと肩の力が抜けて、少しだけ心地よい。もっと味わ...
「会長、明日のことなんですが、予定などありますか?」~
『予定? 俺の?』~
「はい、僕は前にもお話した通り、SOS団の皆さんと多分夜...
『……ほう』~
興味を持ってもらえたらしい。面倒そうだった彼の口調が少...
『明日は帰ってこられそうなのか?』~
「実はお休みを頂いたんです。明日、SOS団の活動が終わっ...
『クリスマス休暇?』~
「そのようなものです」~
答えて僕は微笑した。口に出しながら実感が沸いてくる。~
明日は休みなんだ。もう1年以上も前から、否、涼宮ハルヒ...
会長と明日の約束ができる、それが、休み、ということなの...
『そうか。まあでも遅くなるんだろうな? それに今からじゃ...
「よ、予約ですか? そうですね、時間はちょっと。……すみま...
『いや。俺も予定が一応あるからな。別に構わん。飯も食うだ...
「そうなんですか?」~
『俺にだって用事くらいあるぞ? 生徒会の面々と食事に行こ...
「えっ!」~
それって。……以前に頂いたビラを思い出す。1年有志じゃな...
『特別ゲストにしてくれるというから、行ってみるだけだ。……...
「……少し驚きましたが、いえ、……とんでもないです」~
その後に約束を入れてもいいのでしょうか、と問おうとした...
「それではお互いの予定が終わったら、メールで連絡をすると...
『抜けて……は無理か』~
「すみません」~
『わかった、そうしよう。……じゃあ俺はもう寝るぞ』~
「はい」~
『おやすみ』~
会長が優しく囁く。名残惜しさを感じながら、僕も答えた。~
「おやすみなさい」~
電話が途切れる。~
刹那の余韻が過ぎて、僕は現実に戻った。携帯に表示された...
慌てて建物に駆け戻る僕を、廊下の隅で多丸さんがニヤニヤ...
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