契約愛人17(会×古)
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●第7章-3~
&size(10){(会長モノローグ)};~
~
日が落ちて間もない、こんな時間に古泉が帰宅することは珍...
正確には帰ってきた、ではなく帰されてきた、わけなんだが...
「なんか飲むか?」~
「いえ……」~
「ふうん」~
俺は冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出そうとし、しかしやめ...
何か声をかけるべきだろうか。うまく思い当たらん。~
もう一度立ち上がり、たっぷり砂糖を入れたホットミルクな...
「飲め。乳くさいおまえにぴったりだ」~
「……誰が乳くさいんですか」~
顔を上げて、古泉は眉尻を下げた。そして笑顔を取り戻して...
「そうだ会長。こないだ買われたゲームいかがでしたか?」~
「そこそこだな。教えてやろうか?」~
「是非よかったら」~
笑顔が零れた。作り笑顔の不自然さに気づかない振りをして...
昨日の夜二人でそこで何をしていたか。~
裸で抱きあい、お互いのものを擦りあった場所だ。いやだい...
……なんて気まずい。~
俺は無言でそれを拾う。古泉も拾って、それぞれゴミ箱に放...
隣にまた黙って古泉が腰掛ける。~
シューティングゲームの説明を始めると古泉は黙って頷いて...
俺はそれを隣で見守る。だが割とレベルの高いゲームだ。初...
結局すぐに画面にはゲームオーバーの文字が表示され、肩を...
すぐに視線は俺に戻ってきて、古泉は微笑して告げた。~
「では、お願いできますか?」~
「気が変わった。もう一回やってみろ」~
「……え、……ええ」~
コントローラーを押し付けられた古泉は困ったように視線を...
それでも渋々、スタートボタンを押そうとするやつの手を留...
「……わっ、何するんですかっ」~
「何もしない」~
そう答えて、より強く腕に閉じ込める。~
もうなんか痛々しくて見てられないっつーの。気をつかって...
座ったまま無理やり引き寄せた古泉の腰に手を回し、より自...
「……会長……あの」~
「……言っておくが変な気を起こしたわけじゃないぞ」~
気をつかうのが面倒なだけだ。~
「はぁ……」~
気の抜けた返事が返ってきた。しかも気づいちまった。俺に...
「……病院から電話がかかってくるのを待っているのか?」~
「……!」~
古泉は驚いた様子で顔を上げた。が、俺が捕まえているので...
「それもありますが……もしかしたら呼び出しが来るかもと思い...
「さっきあいつが今日は休めって言ってただろうが」~
苦い顔をすると、古泉は肩を落とした。~
「……でもきっと今夜は大変だと思います。連絡があるかもしれ...
「おまえなー」~
俺は呆れ果て、背中を抱いていた手を古泉の後頭部に移して...
「一日くらいお前がいなくてもなんとかなるだろ、今日はおと...
「……」~
俺のその言葉が古泉は気に入らなかったのだろう。突然、強...
「……やっぱり……機関に戻ります。……すみません……会長」~
「何言ってるんだ」~
俺も立ち上がり、テーブルの上の携帯をつかむと、そのまま...
「どいてください……やっぱり、行かなくちゃ……」~
古泉は真剣だった。俺に体当たりを決めてでも出て行こうと...
なんでそんなにムキになるのか俺にはわからん。~
どこで何をしてこようとしているのかも知らんよ。~
だけどまあ察するよな。今日の古泉はいつもの古泉と違う。...
「行ったらかえって足手まといになるだけなんじゃないのか?」~
俺を通り抜けようと、隙を探っている古泉に俺は冷たく言い...
「あなたには……関係ありません」~
「関係ある。あいつに頼まれてるからな」~
「……お願いです、通してください。僕が、……僕がしっかりして...
「あのなぁ……」~
気持ちはわからんでもない。しかしやっぱり、じゃあ行って...
「悪いが嫌だ。絶対に通さん」~
「……殴りますよ」~
「やれるもんならやってみろ」~
途端に古泉は拳を振り上げてきた。慌てて左手で交わしたが...
「うわっ」~
「すみませんっ」~
俺の横を駆け抜けようとする古泉。させるか。腕を伸ばして...
今度は古泉が倒れこむ番だ。俺はその体に馬乗りになって、...
「俺の勝ちだ」~
「まだです!」~
叫ぶと同時に、下敷きにしていた足がうねって、俺を蹴り飛...
「させるかっ」~
痛みをこらえて後を追い、先を行く古泉の腕を後ろから掴ん...
「……うっ!!」~
力の加減なんてできやしない。勢いで入れ違いに玄関に立ち...
「……行かせてください……会長」~
「いやなもんはいやだね」~
俺は背中ごしに玄関のドアの施錠を確認する。古泉は倒れた...
そのままどれくらい睨み合っていただろうね。~
漸く諦めがついたのか、古泉は起き上がり、手に握った携帯...
まさか部屋の窓から出て行くつもりじゃないだろうかと、俺...
だが、古泉が向かった先は俺たちの部屋のベッドだった。~
「……」~
ベッドに腰掛け俯いているやつの隣に腰掛ける。その手には...
まったく……~
どうでもいいことかもしれないが、俺ってなんて面倒見がい...
もし古泉がここを飛び出していったところで、多分あの多丸...
そもそも機関の連中の頼みなんか、俺は、自分の役割以外に...
古泉もそうしたほうが気が晴れるっていうなら行けばいい。~
普段よりも冷静さは欠いているし、疲れているようにも見え...
そうわかっちゃいるのに。
それでも目が離せないし、構ってやりたかった。これがもし...
なんてことを考えつつ、俺たちはまたしばらくお互い黙った...
時計の針が七時を回って、窓の外はすっかり真っ暗になって...
腰を浮かせた俺の腕を、古泉が掴んでいた。~
「ん?」~
「……あの」~
震える戸惑いがちな眼差し。何かを言おうとして逡巡してい...
「なんだ?」~
腰掛け直して覗き込む。さんざ迷ったという素振りで古泉は...
「……抱いて、下さい」~
「はぁ?」~
さすがにそれは耳を疑う。~
だが古泉はうろたえつつも、もう一度俺に囁いた。~
「抱いて欲しい……って言ったんです……」~
「何言って」~
俺の脳内のほうが混乱するわ。しかも告げた本人は俺に体を...
無碍にするわけにもいかず、俺は古泉に体を向けて腕の中に...
「おまえなぁ……抱いてって意味わかって言ってるのか?」~
「……はい」~
「はいって。……突っ込むぞ」~
腕の中の体がびくりと硬くなる。だがやつはただますます顔...
……おい。~
据え膳? これってもしかして据え膳?~
ま、まあねぇ……、昨日のやつの反応の良さを思えば、次回く...
「それじゃ、そうしよう」~
俺は苦笑すると抱きしめたまま、一緒にベッドに倒れこんだ...
それから古泉の手に強く握られたままの携帯を奪って、俺の...
「あっ……」~
「これは邪魔だろ」~
「……え、ええ」~
緊張で縮こまってる体をさらに抱き寄せて、うんと密着させ...
「会長……?」~
小さく告げられる声に耳をすませる。~
「ん?」~
「いえ……その」~
「なんだよ」~
「……抱いて……欲しいんですが」~
「抱いてるじゃないか、ぎゅっと」~
腕の力を強めて、さらにぎゅうぎゅうしてやる。胸に顔を埋...
肩口からぷはあと顔を上げて、古泉は俺の首筋にごにょごに...
「あの……そうじゃ、なくて」~
「嫌なこと思い出したくないから、気持ちよくして欲しいって...
少しだけ冷たく返すと、古泉ははっと息を飲み、押し黙る。~
「あのさ、古泉。……ヤケになるな。こんな時にセックスして気...
男だからね、敏感な部分に刺激を与えれば一瞬の心地よさは...
慣れた体ならともかく……古泉相手にそういうのは忌避したい...
「でも……」~
「でも、なんだ?」~
「……僕はあなたにも満足に応えられていない、って思ったんで...
「何の話だ?」~
眉が思わず寄った。何を言いたいかさっぱりわからん。~
俺の腕の中で息を吐き、淡々と古泉は呟き始めた。~
「……あの場所にいたのに、僕は彼を守るどころか犯人も見つけ...
「……そうか」~
柔らかな髪を軽く撫でてやる。~
戦う、なんて物騒だな。しかし……実は世のため人のため正義...
「そうだな……今から、行くか?」~
「……連絡がありません」~
拗ねた口調が返ってきた。~
「ああそうか……」~
携帯が鳴るのを待ってるわけか。飼い慣らされた犬みたいに。~
さっき途中で出て行くのを諦めたのも、俺が立ち塞がってい...
滲み出る苦笑を感づかれないように、より深く抱きしめて背...
「ほんとに不器用きわまりないな、お前は」~
「……」~
さすがにむっとしたのか古泉は黙り込んだ。~
「まあいいじゃないか、一晩くらい。よくわからんが、あいつ...
「……機関が手配した病院ですから何かあればすぐに連絡が入り...
「ふぅん。じゃあ、連絡があったら俺が起こしてやるから、も...
「寝ろって……」~
「それじゃさっき言ったみたいに……セックスするか?」~
「……それは……」~
返事に戸惑いがあった。困惑は冷静を取り戻した証だ。落ち...
俺は安堵して、その耳元にそっと口付ける。~
「冗談だ。俺は別に急いじゃねぇよ。気にすんな」~
「……はい」~
素直な同意。そうそう、お前はそうじゃなくっちゃ。~
抱きしめた腕の中で古泉はそれからもしばらく色々と呟いて...
その声も徐々に少なくなり、やがて寝息しか聞こえなくなっ...
やはり疲れていたのだろう。まあゆっくり眠るのが一番いい...
~
まったくね。~
俺は古泉に甘すぎる。~
眠っている古泉を寝かせなおし、いい加減腹も減っていた俺...
冷えたビールを、布団とあいつの体温で温もった体に流し込...
妙に苦かった。~
顔をしかめながら、ズボンのポケットに入れっぱなしだった...
新着メールを知らせるマークが出ていた。~
開くと、見知らぬやつからのメール。差出人は……ほう。~
『 古泉は大丈夫かな? 』~
なんでやつが俺のメールアドレスを知っているのかはなはだ...
っていうか、あいつも古泉に甘すぎないか?~
むかつくから返信はしないでおくことにして、俺は乱暴にそ...
~
~
◆◆◆~
~
~
早朝、爆睡から目覚めた古泉は、朝の6時頃にはもうバタバ...
機関に寄って、それから病院の規定面会時間の開始と同時に...
意識不明の彼の付き添いは他の団員と三交代制と言ってたか...
夜の10時過ぎになり、また忌々しいやつから連絡があった。~
どこかで頑張りすぎて気絶した古泉を彼はタクシーで搬送し...
下手をすれば死んでたかもしれない、なんて薄気味悪いこと...
で、翌日はまた同じことの繰り返し。~
まだマシだったのは、夜中の二時に自分の足で帰ってきたこ...
「……まだ彼が目覚めないんです……」~
と、古泉は蒼白な表情でフラフラ足を心配して出迎えた俺に...
朝になっても戻らず、メールで、直接病院へ行きます、と送...
~
北高から運ばれたにしては、少々遠い区画の私立病院。~
差し入れを持ってきたから降りてこい、と病院の門の外から...
病院の中ではメールチェックなど出来ないだろうと時間潰し...
『今、行きます』~
門へと再び戻ってきた俺の視界に、病院の玄関から出てくる...
久しぶりに見る笑顔を浮かべた古泉は駆け寄って近づいてく...
「……目を覚ましたんです、彼が」~
小さな声で告げられた報告。お前の顔を見た時から分かって...
「よかったな」~
俺は古泉の肩に手を置き、顔を起こさせる。こんな往来で抱...
笑顔を浮かべたやつの目元には、涙がじんわりと浮いてきて...
苦笑してその涙を指で拭い、俺は持参した土産を押し付ける。~
「……こんなところで泣くな。これ、ケーキだ。何人分かわから...
「え、ええ。……ありがとうございます。まさか会長これ……」~
「手作りじゃねぇよ、勘違いすんな。途中で買ってきたんだ。...
懸案事項が片付いたならそれでよし。俺はめそめそしそうな...
甘やかすのは俺と二人でいる時間だけで十分だろ?~
~
名残り惜しそうに数度振り返り、古泉は病院に戻っていった。~
そして、その後姿を見送ってから、もう少し話したかったな...
~
久しぶりに心がほかほかに温まる日だった。~
どうせあいつはすぐには帰宅しないだろうから、わざと遠回...
すっかり街のどこかしこもクリスマス仕様と変化していて。~
愛を奏でるクリスマスソングに、鈴の音。赤と白のサンタク...
どうしようもなく安定している俺の日々。去年じゃ考えられ...
……古泉がいてくれたおかげだ。~
~
上機嫌が過ぎて、花屋になんぞ立ち寄ってしまった。ポイン...
男同士の飾りっけのない部屋には、この鉢植えだけでも十分...
来年の冬には古泉はもういない。~
だから。~
二人で過ごした季節を忘れぬようにね。~
俺にだけわかれば十分な、記念の品になりそうだと、ひとり...
~
~
[[ →→つづき(契約愛人18)>http://haruhi.kazeki.net/?%E5...
~
&size(10){(消失話終了です。こんなに古泉は弱く無いと思う...
- 今か今かとお待ちしておりました!!続きも楽しみにしてい...
- 待ってました!消失話も素敵でした・・・これからも楽しみにし...
- 会長、会長ありがとう。貴方がいてくれてよかった…!「来年...
- 待ってましたー!今回も楽しませて頂きました! -- &new{2...
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終了行:
●第7章-3~
&size(10){(会長モノローグ)};~
~
日が落ちて間もない、こんな時間に古泉が帰宅することは珍...
正確には帰ってきた、ではなく帰されてきた、わけなんだが...
「なんか飲むか?」~
「いえ……」~
「ふうん」~
俺は冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出そうとし、しかしやめ...
何か声をかけるべきだろうか。うまく思い当たらん。~
もう一度立ち上がり、たっぷり砂糖を入れたホットミルクな...
「飲め。乳くさいおまえにぴったりだ」~
「……誰が乳くさいんですか」~
顔を上げて、古泉は眉尻を下げた。そして笑顔を取り戻して...
「そうだ会長。こないだ買われたゲームいかがでしたか?」~
「そこそこだな。教えてやろうか?」~
「是非よかったら」~
笑顔が零れた。作り笑顔の不自然さに気づかない振りをして...
昨日の夜二人でそこで何をしていたか。~
裸で抱きあい、お互いのものを擦りあった場所だ。いやだい...
……なんて気まずい。~
俺は無言でそれを拾う。古泉も拾って、それぞれゴミ箱に放...
隣にまた黙って古泉が腰掛ける。~
シューティングゲームの説明を始めると古泉は黙って頷いて...
俺はそれを隣で見守る。だが割とレベルの高いゲームだ。初...
結局すぐに画面にはゲームオーバーの文字が表示され、肩を...
すぐに視線は俺に戻ってきて、古泉は微笑して告げた。~
「では、お願いできますか?」~
「気が変わった。もう一回やってみろ」~
「……え、……ええ」~
コントローラーを押し付けられた古泉は困ったように視線を...
それでも渋々、スタートボタンを押そうとするやつの手を留...
「……わっ、何するんですかっ」~
「何もしない」~
そう答えて、より強く腕に閉じ込める。~
もうなんか痛々しくて見てられないっつーの。気をつかって...
座ったまま無理やり引き寄せた古泉の腰に手を回し、より自...
「……会長……あの」~
「……言っておくが変な気を起こしたわけじゃないぞ」~
気をつかうのが面倒なだけだ。~
「はぁ……」~
気の抜けた返事が返ってきた。しかも気づいちまった。俺に...
「……病院から電話がかかってくるのを待っているのか?」~
「……!」~
古泉は驚いた様子で顔を上げた。が、俺が捕まえているので...
「それもありますが……もしかしたら呼び出しが来るかもと思い...
「さっきあいつが今日は休めって言ってただろうが」~
苦い顔をすると、古泉は肩を落とした。~
「……でもきっと今夜は大変だと思います。連絡があるかもしれ...
「おまえなー」~
俺は呆れ果て、背中を抱いていた手を古泉の後頭部に移して...
「一日くらいお前がいなくてもなんとかなるだろ、今日はおと...
「……」~
俺のその言葉が古泉は気に入らなかったのだろう。突然、強...
「……やっぱり……機関に戻ります。……すみません……会長」~
「何言ってるんだ」~
俺も立ち上がり、テーブルの上の携帯をつかむと、そのまま...
「どいてください……やっぱり、行かなくちゃ……」~
古泉は真剣だった。俺に体当たりを決めてでも出て行こうと...
なんでそんなにムキになるのか俺にはわからん。~
どこで何をしてこようとしているのかも知らんよ。~
だけどまあ察するよな。今日の古泉はいつもの古泉と違う。...
「行ったらかえって足手まといになるだけなんじゃないのか?」~
俺を通り抜けようと、隙を探っている古泉に俺は冷たく言い...
「あなたには……関係ありません」~
「関係ある。あいつに頼まれてるからな」~
「……お願いです、通してください。僕が、……僕がしっかりして...
「あのなぁ……」~
気持ちはわからんでもない。しかしやっぱり、じゃあ行って...
「悪いが嫌だ。絶対に通さん」~
「……殴りますよ」~
「やれるもんならやってみろ」~
途端に古泉は拳を振り上げてきた。慌てて左手で交わしたが...
「うわっ」~
「すみませんっ」~
俺の横を駆け抜けようとする古泉。させるか。腕を伸ばして...
今度は古泉が倒れこむ番だ。俺はその体に馬乗りになって、...
「俺の勝ちだ」~
「まだです!」~
叫ぶと同時に、下敷きにしていた足がうねって、俺を蹴り飛...
「させるかっ」~
痛みをこらえて後を追い、先を行く古泉の腕を後ろから掴ん...
「……うっ!!」~
力の加減なんてできやしない。勢いで入れ違いに玄関に立ち...
「……行かせてください……会長」~
「いやなもんはいやだね」~
俺は背中ごしに玄関のドアの施錠を確認する。古泉は倒れた...
そのままどれくらい睨み合っていただろうね。~
漸く諦めがついたのか、古泉は起き上がり、手に握った携帯...
まさか部屋の窓から出て行くつもりじゃないだろうかと、俺...
だが、古泉が向かった先は俺たちの部屋のベッドだった。~
「……」~
ベッドに腰掛け俯いているやつの隣に腰掛ける。その手には...
まったく……~
どうでもいいことかもしれないが、俺ってなんて面倒見がい...
もし古泉がここを飛び出していったところで、多分あの多丸...
そもそも機関の連中の頼みなんか、俺は、自分の役割以外に...
古泉もそうしたほうが気が晴れるっていうなら行けばいい。~
普段よりも冷静さは欠いているし、疲れているようにも見え...
そうわかっちゃいるのに。
それでも目が離せないし、構ってやりたかった。これがもし...
なんてことを考えつつ、俺たちはまたしばらくお互い黙った...
時計の針が七時を回って、窓の外はすっかり真っ暗になって...
腰を浮かせた俺の腕を、古泉が掴んでいた。~
「ん?」~
「……あの」~
震える戸惑いがちな眼差し。何かを言おうとして逡巡してい...
「なんだ?」~
腰掛け直して覗き込む。さんざ迷ったという素振りで古泉は...
「……抱いて、下さい」~
「はぁ?」~
さすがにそれは耳を疑う。~
だが古泉はうろたえつつも、もう一度俺に囁いた。~
「抱いて欲しい……って言ったんです……」~
「何言って」~
俺の脳内のほうが混乱するわ。しかも告げた本人は俺に体を...
無碍にするわけにもいかず、俺は古泉に体を向けて腕の中に...
「おまえなぁ……抱いてって意味わかって言ってるのか?」~
「……はい」~
「はいって。……突っ込むぞ」~
腕の中の体がびくりと硬くなる。だがやつはただますます顔...
……おい。~
据え膳? これってもしかして据え膳?~
ま、まあねぇ……、昨日のやつの反応の良さを思えば、次回く...
「それじゃ、そうしよう」~
俺は苦笑すると抱きしめたまま、一緒にベッドに倒れこんだ...
それから古泉の手に強く握られたままの携帯を奪って、俺の...
「あっ……」~
「これは邪魔だろ」~
「……え、ええ」~
緊張で縮こまってる体をさらに抱き寄せて、うんと密着させ...
「会長……?」~
小さく告げられる声に耳をすませる。~
「ん?」~
「いえ……その」~
「なんだよ」~
「……抱いて……欲しいんですが」~
「抱いてるじゃないか、ぎゅっと」~
腕の力を強めて、さらにぎゅうぎゅうしてやる。胸に顔を埋...
肩口からぷはあと顔を上げて、古泉は俺の首筋にごにょごに...
「あの……そうじゃ、なくて」~
「嫌なこと思い出したくないから、気持ちよくして欲しいって...
少しだけ冷たく返すと、古泉ははっと息を飲み、押し黙る。~
「あのさ、古泉。……ヤケになるな。こんな時にセックスして気...
男だからね、敏感な部分に刺激を与えれば一瞬の心地よさは...
慣れた体ならともかく……古泉相手にそういうのは忌避したい...
「でも……」~
「でも、なんだ?」~
「……僕はあなたにも満足に応えられていない、って思ったんで...
「何の話だ?」~
眉が思わず寄った。何を言いたいかさっぱりわからん。~
俺の腕の中で息を吐き、淡々と古泉は呟き始めた。~
「……あの場所にいたのに、僕は彼を守るどころか犯人も見つけ...
「……そうか」~
柔らかな髪を軽く撫でてやる。~
戦う、なんて物騒だな。しかし……実は世のため人のため正義...
「そうだな……今から、行くか?」~
「……連絡がありません」~
拗ねた口調が返ってきた。~
「ああそうか……」~
携帯が鳴るのを待ってるわけか。飼い慣らされた犬みたいに。~
さっき途中で出て行くのを諦めたのも、俺が立ち塞がってい...
滲み出る苦笑を感づかれないように、より深く抱きしめて背...
「ほんとに不器用きわまりないな、お前は」~
「……」~
さすがにむっとしたのか古泉は黙り込んだ。~
「まあいいじゃないか、一晩くらい。よくわからんが、あいつ...
「……機関が手配した病院ですから何かあればすぐに連絡が入り...
「ふぅん。じゃあ、連絡があったら俺が起こしてやるから、も...
「寝ろって……」~
「それじゃさっき言ったみたいに……セックスするか?」~
「……それは……」~
返事に戸惑いがあった。困惑は冷静を取り戻した証だ。落ち...
俺は安堵して、その耳元にそっと口付ける。~
「冗談だ。俺は別に急いじゃねぇよ。気にすんな」~
「……はい」~
素直な同意。そうそう、お前はそうじゃなくっちゃ。~
抱きしめた腕の中で古泉はそれからもしばらく色々と呟いて...
その声も徐々に少なくなり、やがて寝息しか聞こえなくなっ...
やはり疲れていたのだろう。まあゆっくり眠るのが一番いい...
~
まったくね。~
俺は古泉に甘すぎる。~
眠っている古泉を寝かせなおし、いい加減腹も減っていた俺...
冷えたビールを、布団とあいつの体温で温もった体に流し込...
妙に苦かった。~
顔をしかめながら、ズボンのポケットに入れっぱなしだった...
新着メールを知らせるマークが出ていた。~
開くと、見知らぬやつからのメール。差出人は……ほう。~
『 古泉は大丈夫かな? 』~
なんでやつが俺のメールアドレスを知っているのかはなはだ...
っていうか、あいつも古泉に甘すぎないか?~
むかつくから返信はしないでおくことにして、俺は乱暴にそ...
~
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◆◆◆~
~
~
早朝、爆睡から目覚めた古泉は、朝の6時頃にはもうバタバ...
機関に寄って、それから病院の規定面会時間の開始と同時に...
意識不明の彼の付き添いは他の団員と三交代制と言ってたか...
夜の10時過ぎになり、また忌々しいやつから連絡があった。~
どこかで頑張りすぎて気絶した古泉を彼はタクシーで搬送し...
下手をすれば死んでたかもしれない、なんて薄気味悪いこと...
で、翌日はまた同じことの繰り返し。~
まだマシだったのは、夜中の二時に自分の足で帰ってきたこ...
「……まだ彼が目覚めないんです……」~
と、古泉は蒼白な表情でフラフラ足を心配して出迎えた俺に...
朝になっても戻らず、メールで、直接病院へ行きます、と送...
~
北高から運ばれたにしては、少々遠い区画の私立病院。~
差し入れを持ってきたから降りてこい、と病院の門の外から...
病院の中ではメールチェックなど出来ないだろうと時間潰し...
『今、行きます』~
門へと再び戻ってきた俺の視界に、病院の玄関から出てくる...
久しぶりに見る笑顔を浮かべた古泉は駆け寄って近づいてく...
「……目を覚ましたんです、彼が」~
小さな声で告げられた報告。お前の顔を見た時から分かって...
「よかったな」~
俺は古泉の肩に手を置き、顔を起こさせる。こんな往来で抱...
笑顔を浮かべたやつの目元には、涙がじんわりと浮いてきて...
苦笑してその涙を指で拭い、俺は持参した土産を押し付ける。~
「……こんなところで泣くな。これ、ケーキだ。何人分かわから...
「え、ええ。……ありがとうございます。まさか会長これ……」~
「手作りじゃねぇよ、勘違いすんな。途中で買ってきたんだ。...
懸案事項が片付いたならそれでよし。俺はめそめそしそうな...
甘やかすのは俺と二人でいる時間だけで十分だろ?~
~
名残り惜しそうに数度振り返り、古泉は病院に戻っていった。~
そして、その後姿を見送ってから、もう少し話したかったな...
~
久しぶりに心がほかほかに温まる日だった。~
どうせあいつはすぐには帰宅しないだろうから、わざと遠回...
すっかり街のどこかしこもクリスマス仕様と変化していて。~
愛を奏でるクリスマスソングに、鈴の音。赤と白のサンタク...
どうしようもなく安定している俺の日々。去年じゃ考えられ...
……古泉がいてくれたおかげだ。~
~
上機嫌が過ぎて、花屋になんぞ立ち寄ってしまった。ポイン...
男同士の飾りっけのない部屋には、この鉢植えだけでも十分...
来年の冬には古泉はもういない。~
だから。~
二人で過ごした季節を忘れぬようにね。~
俺にだけわかれば十分な、記念の品になりそうだと、ひとり...
~
~
[[ →→つづき(契約愛人18)>http://haruhi.kazeki.net/?%E5...
~
&size(10){(消失話終了です。こんなに古泉は弱く無いと思う...
- 今か今かとお待ちしておりました!!続きも楽しみにしてい...
- 待ってました!消失話も素敵でした・・・これからも楽しみにし...
- 会長、会長ありがとう。貴方がいてくれてよかった…!「来年...
- 待ってましたー!今回も楽しませて頂きました! -- &new{2...
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