ナルシス・ノワール(妹→古キョン)※暗め展開
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開始行:
眩しい程に青い空、雲、風。 ~
時間の流れというのは様々なものを変えてしまうが、10年前に...
白いフェリーも、まるでそのままだ。 ~
皆で輪を作った休憩所、兄が缶を手から溢れさせて落とした自...
~
~
~
その頃の私は兄が連れてきた彼に憧れを抱いていた。 ~
古泉一樹。 ~
兄は高校に入ると新しい友人達と連日行動を供にしていた。 ~
彼もその中の一人で、初めて逢った時から幼いながらに惹かれ...
物優しげな瞳に、白い抜ける肌。誰しもを魅了する笑顔。 ~
そして彼を目で追う間に気付いたことがある。 ~
今思えばそれは、私がまだ小さかったからこそ気付いたんだろ...
彼のーー古泉くんの視線の先にいつも兄がいたこと。 ~
それに対し兄の瞳にもまた、彼が映っていたことに。 ~
周りは皆、兄は涼宮ハルヒと付き合っていると思っていたよう...
それもそうだ。これは今になって分かることだが、どうやら実...
その頃の私には、それが何故かなど、知る由もなかった。 ~
~
~
無理矢理、合宿と称した旅行についていったことがある。 ~
正直に話すとその時の記憶は、もうあまりはっきりは無い。~
それでもただ一つ。鮮明に覚えていることがある。 ~
夜中に覗いてしまった、兄と彼の、重なる影。 ~
薄暗い中で抱き合う姿を見ても、当時はその行為の意味が分か...
しかし、それはとても甘美で、美しい、と。胸が騒いだ。 ~
いつもの穏やかな様子とは違う、甘い声で囁く彼の声。 ~
その声が、耳を離れなかった。 ~
「キョン君は、古泉くんのことが好きなの?」~
その旅行の帰り道、尋ねると、兄は複雑そうな表情を浮かべ、...
そして私の頭に手を置き、髪をくしゃっとして、一言呟いた。 ~
「お前でも、誰でもいいから一人くらい本当のことを知ってい...
~
~
それから、暫くした頃だった。~
兄が消えた。 ~
~
~
普段と何も変わらない朝だったと思う。 ~
起きて、一階に降りたそこには、兄の姿がなかった。~
「キョン君もう学校行っちゃったの?」 ~
一人分の食事しか用意されていないテーブルを見て母に聞く。~
その問いに母はこう答えたのだ。~
「…何言ってるの?キョン君って誰のことよ。」~
最初は理解できなくて、母を問いつめた。確かに存在していた...
しかし母は私は一人っ子で兄などいない、と最後には私を心配...
兄の部屋は空の部屋で何もなく、家の中に兄の痕跡は、何もな...
その日、私は兄が通っていた筈の高校を訪れた。 ~
小さな私にそれは大冒険で、それでも、確認しなくてはならな...
兄が存在していたこと。そして、彼のこと。 ~
校門で下校していく生徒を捕まえて兄のことを、彼のことを聞...
誰も兄のことを知らなければ、SOS団というものの存在も知らな...
そして、彼のことを知る人もいない。 ~
それ以上、私にはどうすることもできなかった。~
私は、何か行動を起こすには、幼過ぎたのだ。 ~
~
~
兄のことも彼のことも、何も分からないまま月日は流れる。 ~
10年という時が過ぎ、私は兄の歳も超え、兄の顔も彼の顔も段...
「…有希ちゃん…?」 ~
SOS団の一人だった彼女と再会した。~
「あなたに渡さなければいけないものがある。」~
彼女は、10年という月日を感じさせない口調で話始めた。~
「これを。」 ~
彼女が差し出したのは、一通の手紙。~
「あなたのお兄さんから頼まれたこと。彼が消失して10年経っ...
「どういうこと…?キョン君が…?あなたはキョン君や古泉くん...
気がついたら彼女に掴みかかっていた。10年間の思いが、溢れ...
「10年前起こった世界の改変で彼と古泉一樹は存在が確認され...
二人の関係が涼宮ハルヒに知れてしまったこと。 ~
そのことが世界を改変する原因になってしまったこと。~
彼女が話すことは、到底私には理解できなかった。~
何か冗談を言っているのではないかと思うが、二人のことを知...
「読んで。彼はこうなることを予測してその手紙をあなたに書...
そう言い残し、彼女は去った。 ~
一人になって、手紙を開ける。 ~
そこに書かれていたのは、間違いなく兄の字だった。~
~
~
『これを読んでるということは俺はこの世界から消えているん...
お前が俺たちのことを覚えてるかは確信がない。が、だたの勘...
~
~
自然と涙が溢れる。~
確かに、兄は、彼は、存在していたのだ。 ~
~
~
『俺たちは近い内にこの世界から消される。ハルヒを本気で怒...
そうならない為にも気付かれないようにしてたんだが…もう限界...
だがこの手紙には何の意味も無い。この手紙を読んだところで...
これは、ただの俺のエゴだ。だから俺や古泉のことを覚えてい...
きっとお前は古泉に憧れてるんだろうからな。』 ~
~
一瞬、手紙をめくる手が止まる。 ~
兄は気付いていたのだ。それが私の初恋だったことに。 ~
それでも、読むことはやめられなかった。 ~
今ここで読まなかったら、誰も兄と彼が存在していたことを肯...
~
手紙のその先に書かれていたのは、高校に入学してからのSOS団...
それは、今までどちらかというと無気力だと思っていた兄の印...
一字一句から感じる、彼への愛情。 ~
自分が消えてしまうことよりも、彼を消してしまうこと、彼へ...
しかし、それでも、彼と出会ったことを、彼と出会うきっかけ...
ったと。~
~
~
『悔しいとは思うが、後悔はしてない。だがな、やっぱり寂し...
~
~
「謝るくらいなら、記憶なんて残さないでよ…キョン君…」 ~
俯くと涙が手紙に落ちて、文字が滲んだ。 ~
その瞬間、封筒からハラリと一枚の写真が落ちる。~
それは孤島で撮った、二人の笑顔の写真だった。 ~
~
~
~
~
その手紙を受け取って数日後、私はあの孤島へと向かっていた...
兄と彼は、もう戻ってこない。その事実を受け止める為にも。 ~
フェリーのデッキに上がり、兄と彼が並んでいた場所の手すり...
風に吹かれる二人の姿が目に浮かぶが、それはこの世界では有...
兄から貰った手紙を再び取り出す。 ~
そして、それを細かく破る。 ~
一つ破る度に記憶が蘇る。 ~
兄と彼の笑顔を。 ~
重なる影を。 ~
彼の甘い声を。~
「…忘れないよ…」~
呟き握っていた手を開き、紙切れとなった手紙は風に乗って散...
終了行:
眩しい程に青い空、雲、風。 ~
時間の流れというのは様々なものを変えてしまうが、10年前に...
白いフェリーも、まるでそのままだ。 ~
皆で輪を作った休憩所、兄が缶を手から溢れさせて落とした自...
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その頃の私は兄が連れてきた彼に憧れを抱いていた。 ~
古泉一樹。 ~
兄は高校に入ると新しい友人達と連日行動を供にしていた。 ~
彼もその中の一人で、初めて逢った時から幼いながらに惹かれ...
物優しげな瞳に、白い抜ける肌。誰しもを魅了する笑顔。 ~
そして彼を目で追う間に気付いたことがある。 ~
今思えばそれは、私がまだ小さかったからこそ気付いたんだろ...
彼のーー古泉くんの視線の先にいつも兄がいたこと。 ~
それに対し兄の瞳にもまた、彼が映っていたことに。 ~
周りは皆、兄は涼宮ハルヒと付き合っていると思っていたよう...
それもそうだ。これは今になって分かることだが、どうやら実...
その頃の私には、それが何故かなど、知る由もなかった。 ~
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無理矢理、合宿と称した旅行についていったことがある。 ~
正直に話すとその時の記憶は、もうあまりはっきりは無い。~
それでもただ一つ。鮮明に覚えていることがある。 ~
夜中に覗いてしまった、兄と彼の、重なる影。 ~
薄暗い中で抱き合う姿を見ても、当時はその行為の意味が分か...
しかし、それはとても甘美で、美しい、と。胸が騒いだ。 ~
いつもの穏やかな様子とは違う、甘い声で囁く彼の声。 ~
その声が、耳を離れなかった。 ~
「キョン君は、古泉くんのことが好きなの?」~
その旅行の帰り道、尋ねると、兄は複雑そうな表情を浮かべ、...
そして私の頭に手を置き、髪をくしゃっとして、一言呟いた。 ~
「お前でも、誰でもいいから一人くらい本当のことを知ってい...
~
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それから、暫くした頃だった。~
兄が消えた。 ~
~
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普段と何も変わらない朝だったと思う。 ~
起きて、一階に降りたそこには、兄の姿がなかった。~
「キョン君もう学校行っちゃったの?」 ~
一人分の食事しか用意されていないテーブルを見て母に聞く。~
その問いに母はこう答えたのだ。~
「…何言ってるの?キョン君って誰のことよ。」~
最初は理解できなくて、母を問いつめた。確かに存在していた...
しかし母は私は一人っ子で兄などいない、と最後には私を心配...
兄の部屋は空の部屋で何もなく、家の中に兄の痕跡は、何もな...
その日、私は兄が通っていた筈の高校を訪れた。 ~
小さな私にそれは大冒険で、それでも、確認しなくてはならな...
兄が存在していたこと。そして、彼のこと。 ~
校門で下校していく生徒を捕まえて兄のことを、彼のことを聞...
誰も兄のことを知らなければ、SOS団というものの存在も知らな...
そして、彼のことを知る人もいない。 ~
それ以上、私にはどうすることもできなかった。~
私は、何か行動を起こすには、幼過ぎたのだ。 ~
~
~
兄のことも彼のことも、何も分からないまま月日は流れる。 ~
10年という時が過ぎ、私は兄の歳も超え、兄の顔も彼の顔も段...
「…有希ちゃん…?」 ~
SOS団の一人だった彼女と再会した。~
「あなたに渡さなければいけないものがある。」~
彼女は、10年という月日を感じさせない口調で話始めた。~
「これを。」 ~
彼女が差し出したのは、一通の手紙。~
「あなたのお兄さんから頼まれたこと。彼が消失して10年経っ...
「どういうこと…?キョン君が…?あなたはキョン君や古泉くん...
気がついたら彼女に掴みかかっていた。10年間の思いが、溢れ...
「10年前起こった世界の改変で彼と古泉一樹は存在が確認され...
二人の関係が涼宮ハルヒに知れてしまったこと。 ~
そのことが世界を改変する原因になってしまったこと。~
彼女が話すことは、到底私には理解できなかった。~
何か冗談を言っているのではないかと思うが、二人のことを知...
「読んで。彼はこうなることを予測してその手紙をあなたに書...
そう言い残し、彼女は去った。 ~
一人になって、手紙を開ける。 ~
そこに書かれていたのは、間違いなく兄の字だった。~
~
~
『これを読んでるということは俺はこの世界から消えているん...
お前が俺たちのことを覚えてるかは確信がない。が、だたの勘...
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自然と涙が溢れる。~
確かに、兄は、彼は、存在していたのだ。 ~
~
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『俺たちは近い内にこの世界から消される。ハルヒを本気で怒...
そうならない為にも気付かれないようにしてたんだが…もう限界...
だがこの手紙には何の意味も無い。この手紙を読んだところで...
これは、ただの俺のエゴだ。だから俺や古泉のことを覚えてい...
きっとお前は古泉に憧れてるんだろうからな。』 ~
~
一瞬、手紙をめくる手が止まる。 ~
兄は気付いていたのだ。それが私の初恋だったことに。 ~
それでも、読むことはやめられなかった。 ~
今ここで読まなかったら、誰も兄と彼が存在していたことを肯...
~
手紙のその先に書かれていたのは、高校に入学してからのSOS団...
それは、今までどちらかというと無気力だと思っていた兄の印...
一字一句から感じる、彼への愛情。 ~
自分が消えてしまうことよりも、彼を消してしまうこと、彼へ...
しかし、それでも、彼と出会ったことを、彼と出会うきっかけ...
ったと。~
~
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『悔しいとは思うが、後悔はしてない。だがな、やっぱり寂し...
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「謝るくらいなら、記憶なんて残さないでよ…キョン君…」 ~
俯くと涙が手紙に落ちて、文字が滲んだ。 ~
その瞬間、封筒からハラリと一枚の写真が落ちる。~
それは孤島で撮った、二人の笑顔の写真だった。 ~
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その手紙を受け取って数日後、私はあの孤島へと向かっていた...
兄と彼は、もう戻ってこない。その事実を受け止める為にも。 ~
フェリーのデッキに上がり、兄と彼が並んでいた場所の手すり...
風に吹かれる二人の姿が目に浮かぶが、それはこの世界では有...
兄から貰った手紙を再び取り出す。 ~
そして、それを細かく破る。 ~
一つ破る度に記憶が蘇る。 ~
兄と彼の笑顔を。 ~
重なる影を。 ~
彼の甘い声を。~
「…忘れないよ…」~
呟き握っていた手を開き、紙切れとなった手紙は風に乗って散...
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