アンインストール(キョン+古)
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*アンインストール [#d4db7520]
「少し、お話があります。この後お暇でしたらおつきあい願い...
そう言った古泉はいつもの人畜無害なハンサムスマイルで、...
どうせハルヒの話なんだろうな、ってのが常識的な判断だ。~
よりによってその日はハルヒが岡部とやりあってカリカリし...
~
~
「……で、話ってのは何だ」~
連れられてきたのは、学校からさほど離れていない公園だ。...
「あの、少し目を閉じて頂けますか?」~
古泉は、友達を遊びに誘う小学生のように楽しそうに言った...
「……閉鎖空間か?」~
俺がそう聞くと、案の定古泉は爽やかに白い歯を光らせて「...
それはわかった、だが何で俺が行かなきゃならんのだ。~
「正直なところ、何の意味もありません。僕のただのワガママ...
笑顔を維持したまま、古泉は胸を張って宣言しやがった。~
「ワガママってお前……」~
俺が絶句したのも仕方がないだろう? ワガママってのはハ...
もし万が一に古泉がそれを言う日が来るとしても、こんなに...
「聞いて頂けませんか? もちろん、あなたの身には何の危険...
「何でだよ」~
「……ですから、僕の個人的なワガママです。寂しいから、と言...
寂しいってお前。~
高校生面下げて何を抜かすか、アホじゃないか、という言葉...
そして俺は迂闊にも素直に肯いて目を閉じ、古泉に手を引か...
もう金輪際、一生二度と体験したくないと思っていた、あの...
~
やっぱり来るんじゃなかった。~
目を開けた途端に俺は激しく後悔した。生命の気配のない、...
……ああ、この空間は確かに寂しいな。お前には同志がいるら...
「おつきあい下さってありがとうございます」~
だがどういうわけか、俺の存在は古泉にとって相当の慰めに...
「……後悔してるぜ。これのどこが『話』だよ」~
「いえ、話はこれから。とにかくここからでは遠すぎるので、...
古泉はそう言うと、先に立って軽やかな足取りですたすた歩...
「へいへい」~
市街地を見下ろす小高い丘に登ると、うつろに赤く光る眼窩...
そこで足を止めた古泉が振り返り、再び口を開いた。~
「……あの、お気を悪くしないで聞いて頂きたいんですが、」~
そしてにこにこと微笑みながら、頭に花が咲いてるんじゃな...
「……実は、僕はあなたが大嫌いだったんです」~
時間が止ったね、というより空気が凍った。生暖かい暢気な...
俺には逃げようもない閉鎖された空間、その暢気な口調と笑...
「ちょ……そんな話をしてどうする気だ。俺が嫌いなら、勝手に...
だが3メートルばかり向こうで微笑む古泉は、立ち止まった...
「……ああ、誤解させてしまったようで申し訳ありません。今は...
どうやら考えすぎらしい。まあ確かに、閉鎖空間内で古泉が殺...
しかしだな、過去形だってならますますワザワザ俺に言う必...
俺に頭の中身を疑われているにもかかわらず、古泉は相変わ...
「……ああ…、そうなのか」~
「ええ。ただ、知っておいて頂きたかったんです。どれほど僕...
何でこんなところでそんな寝覚めの悪いことを聞かされなき...
「あなたにだけ、聞いてほしいんです」~
嬉しそうな顔で言うな。俺は嫌だしさっぱり意味がわからん...
「……あなたにだけは気を許していいと思えるんですよ」~
ちっとも褒められている気がしない、というよりバカにされ...
そうさ、ここから出ることだって、神人がくたばるか古泉が...
「ああ、俺はさぞかし脅威になり得ない安全な人間だろうよ、...
「いえ…ですからそういう意味ではないんですよ」~
古泉は器用にも少しだけ悲しそうに笑って肩をすくめた。~
「……そうですね、こういう言い方はいささか陳腐な気もします...
自惚れられなくて有り難いよ。それでどれほどお前は俺達を...
「いいえ、何も。ただ存在そのものが呪わしかったんです。……...
こいつは何を言っているんだ? 何がしたいんだ? 長門が...
静かな諦念に似た気配を漂わせている古泉の微笑みが怖い。~
「……それから、ご存知の通り、僕は自分で覚悟したり納得した...
「……守って欲しかったのか?」~
朝比奈さんのように、たとえ俺にでも守られてしまうような...
「ええ、何の役にも立たない騎士でも、僕を守ろうとしてくれ...
その、何の役にも立たない騎士ってのは俺のことか。ふざけ...
だが、古泉の憎たらしいほど澄んだ浅い色の瞳の表面が、微...
腹の奥に重金属をたんまり詰め込まれて呼吸も身動きも取れ...
「……僕は、こんな力は欲しくなかった。こんな世界で戦う日々...
アーアーアー聞こえなーい! と両耳を塞いで走り出したい...
だが聴覚検査で左右共に異常なしの俺の耳は自分の呼吸音や...
「……僕らのことなんて知りもしない、世界の全てが憎かった。...
淡々と語りながら、微笑んで握った拳を見つめる古泉の背後...
「……そして、僕は毎日を、永遠に来ないヒーローや世界の崩壊...
最後はほとんど溜息のように、古泉は声を絞った。俯いた顔...
こんな姿の古泉は見たくなかった。こんな、笑うこともでき...
古泉ってのはな、もっとバカみたいにニヤニヤ笑ってて、ど...
「それで…、それで! そんな話を今俺にしてどうしたいって言...
俺は苛立ちと空気の重さに耐えきれず、ついに大声で吼えた...
「……済みません。全部過去形の話です。もう僕はそうは思って...
古泉は顔を上げ、俺の願い通りに笑ってみせた。秋の午後の...
その背後で、倒壊した低層マンションに神人が両腕を叩きつ...
「ただ、聞いて欲しかっただけなんです。そうでないと……僕は...
そしてそう言い残すと、古泉は己の身体の周りに赤い光を集...
「古泉!」~
光の放つ風圧に耐えながら名前を呼ぶと、古泉は微笑んだま...
「…大丈夫ですよ」~
そしてその表情を鋭く引き締めて、戦士のそれに変えて顎を...
昔の古泉が望んだように、恐怖や不安といった感情を一切消...
「古泉、古泉…!」~
冗談じゃないぞ。日頃心情を吐露することをしない奴が、い...
呼吸するように明滅するほの青い巨人に向けて大きく弧を描...
どの光も消えませんように。どの光も神人の攻撃を受けませ...
なあ古泉、過去形だって言ってたから今はそう思ってないん...
こんなのちっとも良くないぞ、安易にこんなことを言うのも...
「だから帰って来い、古泉!」~
俺の叫びと同時に、いつかのように神人の腕がずるりと切れ...
そして神人は大きく身悶え、残った片腕を滅茶苦茶に振り回...
「古泉!」~
俺がこんなところで叫んだところで何の役に立つわけもない...
サッカーや野球の中継だって、テレビ越しで声が届くわきゃ...
だから俺は喉が潰れるかってほど叫んだ。叫び続けた。何度...
「古泉!」~
ずる、と重く湿った嫌な音が聞こえる気がした。もちろんそ...
頭を失った神人の抵抗は急速に弱まり、目標を定めずただ頼...
「やった…!」~
その周囲を飛び回っていた光のひとつが、飛び去った時と同...
「古泉…!」~
近くで見れば人間大の丸い光は、その内側に古泉を閉じこめ...
「大丈夫か、怪我は……」~
「ありませんよ、大丈夫ですと言ったでしょう?」~
まだ目元には昂揚した鋭い光を残したままで古泉は笑い、そ...
「……良かった…!」~
最初に閉鎖空間に連れ込まれた時には、まだ俺は古泉とつき...
だが今はそれなりに長いつきあいで古泉という男がどういう...
「え、あの、……どうなさったんですか?」~
「どうしたもこうしたもあるか! 畜生、脅かしやがって…!」~
「……ええと……。あ、閉鎖空間が消滅しますよ、この周囲には人...
暗い空に亀裂が走る。砕けて割れる。小さな偽物の世界が壊...
それもこれも一方的に、ご丁寧に死亡フラグを立ててから戦...
「……あの…」~
小鳥の鳴き交わす声、カラスの間延びした鳴き声、自動車の...
確かに俺達は普通の世界に帰ってきた。かすり傷一つ負わず...
「……すまん」~
急に鼻の奥が熱くなってきて、俺は慌てて目をきつく閉じた...
「……いえ、まあ別にいいんですけど…」~
ようやく我に返ると、えらく恥ずかしくなった。そりゃあこ...
「……俺が良くない」~
ようやく身体を放すと、古泉がやけに嬉しそうに笑った。~
「そうですね」~
何を喜んでるんだか、古泉はやたらとニヤニヤしている。い...
何なんだ一体。気色の悪い。抱きつかれて嬉しかったとかじ...
「いやあ、ついてきて頂いて良かったなと思いまして。ご声援...
そうかそうか、そうだよな、男に抱きつかれたことが嬉しく...
「……多少ですがね」~
「……忘れろ!」~
忘れてくれ頼むから。忘れて下さいお願いします。~
「いえ、これで今後の閉鎖空間での戦いが寂しくなくなりそう...
やめてくれ。恥ずかしすぎて穴がなくても掘って埋めたいぐ...
「……そもそもだな、寂しいからついてきて欲しかった、それは...
「先へ進むために必要だったんですよ」~
「先ってどこだよ?」~
軽く首を振って目にかかる前髪を散らし、古泉はまた頭のユ...
「……さあ、どこなんでしょうね」~
「ふざけるなよ、あんな重たい話を一方的に聞かされた俺の身...
いつもニコニコしてる奴があんな絶望的な思いを抱いていた...
「……僕が、そういう気持ちを完全に捨てるために。僕は今はあ...
だからお前のたとえはいちいちおかしいんだよ。なんだそれ...
「どんな技を使うかは、秘密です」~
ウインクするな! 乗らんでいい! 気持ち悪い。~
「だいたい俺はミダス王の床屋が掘った穴か何かか? 人を何...
睨んでやると、古泉はふわふわとアホっぽく笑いながら両手...
「とんでもない、その穴にはおしゃべりな葦がつきものでしょ...
それからいきなり俺を抱きしめると、急にえらく真面目な声...
「……あなたは、僕の大切な親友ですから」~
まあ、今日は息がかかるのは甘受してやる。有り難く思え。~
「…アホか、俺にそれでドン引きされたらどうする気だったんだ...
「結構危ない賭けでしたね。でも僕は賭けに勝てたようなので…...
その背中を抱き返してやりながら、俺は思ったね。この俺の...
「お前は間違いなくアホだ」~
「ひどいですね…」~
「アホをアホと言って何が悪い」~
「ひどいですよ! 僕はあなたを信頼していると言っただけで」~
「そこがアホだ!」~
「……アホって言った人がアホなんですよ!」~
気がついたら俺達のハグはただのヘッドロックの掛け合いに...
ああそうさ、俺も紛れもない本物の大アホだ。それがどうし...
俺達の間にあるのはたぶんもっと曖昧な……形も不確かで名前...
そういう、なんだか得体の知れない関係の方が俺達にはしっ...
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「少し、お話があります。この後お暇でしたらおつきあい願い...
そう言った古泉はいつもの人畜無害なハンサムスマイルで、...
どうせハルヒの話なんだろうな、ってのが常識的な判断だ。~
よりによってその日はハルヒが岡部とやりあってカリカリし...
~
~
「……で、話ってのは何だ」~
連れられてきたのは、学校からさほど離れていない公園だ。...
「あの、少し目を閉じて頂けますか?」~
古泉は、友達を遊びに誘う小学生のように楽しそうに言った...
「……閉鎖空間か?」~
俺がそう聞くと、案の定古泉は爽やかに白い歯を光らせて「...
それはわかった、だが何で俺が行かなきゃならんのだ。~
「正直なところ、何の意味もありません。僕のただのワガママ...
笑顔を維持したまま、古泉は胸を張って宣言しやがった。~
「ワガママってお前……」~
俺が絶句したのも仕方がないだろう? ワガママってのはハ...
もし万が一に古泉がそれを言う日が来るとしても、こんなに...
「聞いて頂けませんか? もちろん、あなたの身には何の危険...
「何でだよ」~
「……ですから、僕の個人的なワガママです。寂しいから、と言...
寂しいってお前。~
高校生面下げて何を抜かすか、アホじゃないか、という言葉...
そして俺は迂闊にも素直に肯いて目を閉じ、古泉に手を引か...
もう金輪際、一生二度と体験したくないと思っていた、あの...
~
やっぱり来るんじゃなかった。~
目を開けた途端に俺は激しく後悔した。生命の気配のない、...
……ああ、この空間は確かに寂しいな。お前には同志がいるら...
「おつきあい下さってありがとうございます」~
だがどういうわけか、俺の存在は古泉にとって相当の慰めに...
「……後悔してるぜ。これのどこが『話』だよ」~
「いえ、話はこれから。とにかくここからでは遠すぎるので、...
古泉はそう言うと、先に立って軽やかな足取りですたすた歩...
「へいへい」~
市街地を見下ろす小高い丘に登ると、うつろに赤く光る眼窩...
そこで足を止めた古泉が振り返り、再び口を開いた。~
「……あの、お気を悪くしないで聞いて頂きたいんですが、」~
そしてにこにこと微笑みながら、頭に花が咲いてるんじゃな...
「……実は、僕はあなたが大嫌いだったんです」~
時間が止ったね、というより空気が凍った。生暖かい暢気な...
俺には逃げようもない閉鎖された空間、その暢気な口調と笑...
「ちょ……そんな話をしてどうする気だ。俺が嫌いなら、勝手に...
だが3メートルばかり向こうで微笑む古泉は、立ち止まった...
「……ああ、誤解させてしまったようで申し訳ありません。今は...
どうやら考えすぎらしい。まあ確かに、閉鎖空間内で古泉が殺...
しかしだな、過去形だってならますますワザワザ俺に言う必...
俺に頭の中身を疑われているにもかかわらず、古泉は相変わ...
「……ああ…、そうなのか」~
「ええ。ただ、知っておいて頂きたかったんです。どれほど僕...
何でこんなところでそんな寝覚めの悪いことを聞かされなき...
「あなたにだけ、聞いてほしいんです」~
嬉しそうな顔で言うな。俺は嫌だしさっぱり意味がわからん...
「……あなたにだけは気を許していいと思えるんですよ」~
ちっとも褒められている気がしない、というよりバカにされ...
そうさ、ここから出ることだって、神人がくたばるか古泉が...
「ああ、俺はさぞかし脅威になり得ない安全な人間だろうよ、...
「いえ…ですからそういう意味ではないんですよ」~
古泉は器用にも少しだけ悲しそうに笑って肩をすくめた。~
「……そうですね、こういう言い方はいささか陳腐な気もします...
自惚れられなくて有り難いよ。それでどれほどお前は俺達を...
「いいえ、何も。ただ存在そのものが呪わしかったんです。……...
こいつは何を言っているんだ? 何がしたいんだ? 長門が...
静かな諦念に似た気配を漂わせている古泉の微笑みが怖い。~
「……それから、ご存知の通り、僕は自分で覚悟したり納得した...
「……守って欲しかったのか?」~
朝比奈さんのように、たとえ俺にでも守られてしまうような...
「ええ、何の役にも立たない騎士でも、僕を守ろうとしてくれ...
その、何の役にも立たない騎士ってのは俺のことか。ふざけ...
だが、古泉の憎たらしいほど澄んだ浅い色の瞳の表面が、微...
腹の奥に重金属をたんまり詰め込まれて呼吸も身動きも取れ...
「……僕は、こんな力は欲しくなかった。こんな世界で戦う日々...
アーアーアー聞こえなーい! と両耳を塞いで走り出したい...
だが聴覚検査で左右共に異常なしの俺の耳は自分の呼吸音や...
「……僕らのことなんて知りもしない、世界の全てが憎かった。...
淡々と語りながら、微笑んで握った拳を見つめる古泉の背後...
「……そして、僕は毎日を、永遠に来ないヒーローや世界の崩壊...
最後はほとんど溜息のように、古泉は声を絞った。俯いた顔...
こんな姿の古泉は見たくなかった。こんな、笑うこともでき...
古泉ってのはな、もっとバカみたいにニヤニヤ笑ってて、ど...
「それで…、それで! そんな話を今俺にしてどうしたいって言...
俺は苛立ちと空気の重さに耐えきれず、ついに大声で吼えた...
「……済みません。全部過去形の話です。もう僕はそうは思って...
古泉は顔を上げ、俺の願い通りに笑ってみせた。秋の午後の...
その背後で、倒壊した低層マンションに神人が両腕を叩きつ...
「ただ、聞いて欲しかっただけなんです。そうでないと……僕は...
そしてそう言い残すと、古泉は己の身体の周りに赤い光を集...
「古泉!」~
光の放つ風圧に耐えながら名前を呼ぶと、古泉は微笑んだま...
「…大丈夫ですよ」~
そしてその表情を鋭く引き締めて、戦士のそれに変えて顎を...
昔の古泉が望んだように、恐怖や不安といった感情を一切消...
「古泉、古泉…!」~
冗談じゃないぞ。日頃心情を吐露することをしない奴が、い...
呼吸するように明滅するほの青い巨人に向けて大きく弧を描...
どの光も消えませんように。どの光も神人の攻撃を受けませ...
なあ古泉、過去形だって言ってたから今はそう思ってないん...
こんなのちっとも良くないぞ、安易にこんなことを言うのも...
「だから帰って来い、古泉!」~
俺の叫びと同時に、いつかのように神人の腕がずるりと切れ...
そして神人は大きく身悶え、残った片腕を滅茶苦茶に振り回...
「古泉!」~
俺がこんなところで叫んだところで何の役に立つわけもない...
サッカーや野球の中継だって、テレビ越しで声が届くわきゃ...
だから俺は喉が潰れるかってほど叫んだ。叫び続けた。何度...
「古泉!」~
ずる、と重く湿った嫌な音が聞こえる気がした。もちろんそ...
頭を失った神人の抵抗は急速に弱まり、目標を定めずただ頼...
「やった…!」~
その周囲を飛び回っていた光のひとつが、飛び去った時と同...
「古泉…!」~
近くで見れば人間大の丸い光は、その内側に古泉を閉じこめ...
「大丈夫か、怪我は……」~
「ありませんよ、大丈夫ですと言ったでしょう?」~
まだ目元には昂揚した鋭い光を残したままで古泉は笑い、そ...
「……良かった…!」~
最初に閉鎖空間に連れ込まれた時には、まだ俺は古泉とつき...
だが今はそれなりに長いつきあいで古泉という男がどういう...
「え、あの、……どうなさったんですか?」~
「どうしたもこうしたもあるか! 畜生、脅かしやがって…!」~
「……ええと……。あ、閉鎖空間が消滅しますよ、この周囲には人...
暗い空に亀裂が走る。砕けて割れる。小さな偽物の世界が壊...
それもこれも一方的に、ご丁寧に死亡フラグを立ててから戦...
「……あの…」~
小鳥の鳴き交わす声、カラスの間延びした鳴き声、自動車の...
確かに俺達は普通の世界に帰ってきた。かすり傷一つ負わず...
「……すまん」~
急に鼻の奥が熱くなってきて、俺は慌てて目をきつく閉じた...
「……いえ、まあ別にいいんですけど…」~
ようやく我に返ると、えらく恥ずかしくなった。そりゃあこ...
「……俺が良くない」~
ようやく身体を放すと、古泉がやけに嬉しそうに笑った。~
「そうですね」~
何を喜んでるんだか、古泉はやたらとニヤニヤしている。い...
何なんだ一体。気色の悪い。抱きつかれて嬉しかったとかじ...
「いやあ、ついてきて頂いて良かったなと思いまして。ご声援...
そうかそうか、そうだよな、男に抱きつかれたことが嬉しく...
「……多少ですがね」~
「……忘れろ!」~
忘れてくれ頼むから。忘れて下さいお願いします。~
「いえ、これで今後の閉鎖空間での戦いが寂しくなくなりそう...
やめてくれ。恥ずかしすぎて穴がなくても掘って埋めたいぐ...
「……そもそもだな、寂しいからついてきて欲しかった、それは...
「先へ進むために必要だったんですよ」~
「先ってどこだよ?」~
軽く首を振って目にかかる前髪を散らし、古泉はまた頭のユ...
「……さあ、どこなんでしょうね」~
「ふざけるなよ、あんな重たい話を一方的に聞かされた俺の身...
いつもニコニコしてる奴があんな絶望的な思いを抱いていた...
「……僕が、そういう気持ちを完全に捨てるために。僕は今はあ...
だからお前のたとえはいちいちおかしいんだよ。なんだそれ...
「どんな技を使うかは、秘密です」~
ウインクするな! 乗らんでいい! 気持ち悪い。~
「だいたい俺はミダス王の床屋が掘った穴か何かか? 人を何...
睨んでやると、古泉はふわふわとアホっぽく笑いながら両手...
「とんでもない、その穴にはおしゃべりな葦がつきものでしょ...
それからいきなり俺を抱きしめると、急にえらく真面目な声...
「……あなたは、僕の大切な親友ですから」~
まあ、今日は息がかかるのは甘受してやる。有り難く思え。~
「…アホか、俺にそれでドン引きされたらどうする気だったんだ...
「結構危ない賭けでしたね。でも僕は賭けに勝てたようなので…...
その背中を抱き返してやりながら、俺は思ったね。この俺の...
「お前は間違いなくアホだ」~
「ひどいですね…」~
「アホをアホと言って何が悪い」~
「ひどいですよ! 僕はあなたを信頼していると言っただけで」~
「そこがアホだ!」~
「……アホって言った人がアホなんですよ!」~
気がついたら俺達のハグはただのヘッドロックの掛け合いに...
ああそうさ、俺も紛れもない本物の大アホだ。それがどうし...
俺達の間にあるのはたぶんもっと曖昧な……形も不確かで名前...
そういう、なんだか得体の知れない関係の方が俺達にはしっ...
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