古泉×キョン バレンタイン
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*≪古泉×キョン バレンタイン≫ [#z246e05f] ~ 「おい、古泉」 ~ 放課後、部室へ向かって歩いていると、聞き慣れた声に後ろから呼び止められた。 ~ 「はい」 ~ 振り向くと、彼の姿が目にはいる。些か不機嫌そうな。 ~ 「…ちょっと」 ~ そう言うと、彼は部室とは反対方向へ歩き始めた。ついて来いという事だと思い、彼の後に続くと踊り場に着いた。 ~ ~ 「キョン君?」 ~ 5分ほど続いた沈黙に耐えられず声をかけると、彼は意を決したような顔をして ~ 鞄から包みを取り出し、僕に差し出した。 ~ 「………これ」 ~ リボンがかかったピンク色の可愛らしい箱。 ~ ~ 正直に言いましょう、『期待していた』と。 ~ ~ 僕だって健全な高校一年生の男の子です。 ~ 好きな人からチョコを貰いたいと思うのは当前の事で…。 ~ ~ 「キョ」 ~ 「妹からだ。『キョン君がいつもお世話になってます』だとよ」 ~ ええ、わかっていましたとも…。 ~ ~ 僕も彼も男の子です。 ~ バレンタインというのは女性が男性にチョコを贈る日ですし…ええ。 ~ ~ 僕はいつも通りの笑顔をつくり、感謝の言葉を述べた。 ~ 「ありがとうございます…とお伝え下さい」 ~ 「ああ」 ~ 鞄にその箱を入れようとしていると声を掛けられた。 ~ 「先に行ってる」 ~ 「はい」 ~ ~ 「古泉」 ~ 階段を数段降りた彼が、こちらをむかずに話し始める。 ~ 「今朝な…どうしても小銭が必要だったんだ」 ~ 何の話だろうと思いながらも相づちを打つ。 ~ 「それで店に入ったら、両替お断りって書いてあって」 ~ あぁ、そういえば最近多いですね。 ~ 「困って、物凄い困って…不本意ながら買い物をしたんだ」 ~ 「『不本意ながら』だぞ」 ~ 「はい」 ~ 彼は一体何が言いたいのだろう。 ~ 「それで、一番安い物を買った訳だが」 ~ こちらから彼の表情は全く見えない。 ~ 「急いでて…俺がそんなに好きじゃない物を買っちまって」 ~ ~ 「だから、」 ~ ごそりとポケットを探る。 ~ ~ 「お前にやる」 ~ ~ こちらへ投げられた何かを受け取る。 ~ 「必要に差し迫られて、不本意ながらで、俺が好きじゃない物だからだぞ」 ~ そう言うと、彼はバタバタと階段を降りて去っていってしまった。 ~ ~ 一体何だろう、と首を傾げながら手を開くとそこには ~ ~ チロルチョコ。 ~ ~ 「これは、これは…」 ~ 思わず笑みがこぼれた。 ~ ~ 「参りましたね」 ~ ~ ~ 「ありがとうございます」 ~ 部室で座っている彼の耳元でそっと囁いてみる。 ~ 「なっ、なんのことだ」 ~ 素知らぬ顔をした彼の頬が、少しばかり赤い気がした。 ~ ~
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*≪古泉×キョン バレンタイン≫ [#z246e05f] ~ 「おい、古泉」 ~ 放課後、部室へ向かって歩いていると、聞き慣れた声に後ろから呼び止められた。 ~ 「はい」 ~ 振り向くと、彼の姿が目にはいる。些か不機嫌そうな。 ~ 「…ちょっと」 ~ そう言うと、彼は部室とは反対方向へ歩き始めた。ついて来いという事だと思い、彼の後に続くと踊り場に着いた。 ~ ~ 「キョン君?」 ~ 5分ほど続いた沈黙に耐えられず声をかけると、彼は意を決したような顔をして ~ 鞄から包みを取り出し、僕に差し出した。 ~ 「………これ」 ~ リボンがかかったピンク色の可愛らしい箱。 ~ ~ 正直に言いましょう、『期待していた』と。 ~ ~ 僕だって健全な高校一年生の男の子です。 ~ 好きな人からチョコを貰いたいと思うのは当前の事で…。 ~ ~ 「キョ」 ~ 「妹からだ。『キョン君がいつもお世話になってます』だとよ」 ~ ええ、わかっていましたとも…。 ~ ~ 僕も彼も男の子です。 ~ バレンタインというのは女性が男性にチョコを贈る日ですし…ええ。 ~ ~ 僕はいつも通りの笑顔をつくり、感謝の言葉を述べた。 ~ 「ありがとうございます…とお伝え下さい」 ~ 「ああ」 ~ 鞄にその箱を入れようとしていると声を掛けられた。 ~ 「先に行ってる」 ~ 「はい」 ~ ~ 「古泉」 ~ 階段を数段降りた彼が、こちらをむかずに話し始める。 ~ 「今朝な…どうしても小銭が必要だったんだ」 ~ 何の話だろうと思いながらも相づちを打つ。 ~ 「それで店に入ったら、両替お断りって書いてあって」 ~ あぁ、そういえば最近多いですね。 ~ 「困って、物凄い困って…不本意ながら買い物をしたんだ」 ~ 「『不本意ながら』だぞ」 ~ 「はい」 ~ 彼は一体何が言いたいのだろう。 ~ 「それで、一番安い物を買った訳だが」 ~ こちらから彼の表情は全く見えない。 ~ 「急いでて…俺がそんなに好きじゃない物を買っちまって」 ~ ~ 「だから、」 ~ ごそりとポケットを探る。 ~ ~ 「お前にやる」 ~ ~ こちらへ投げられた何かを受け取る。 ~ 「必要に差し迫られて、不本意ながらで、俺が好きじゃない物だからだぞ」 ~ そう言うと、彼はバタバタと階段を降りて去っていってしまった。 ~ ~ 一体何だろう、と首を傾げながら手を開くとそこには ~ ~ チロルチョコ。 ~ ~ 「これは、これは…」 ~ 思わず笑みがこぼれた。 ~ ~ 「参りましたね」 ~ ~ ~ 「ありがとうございます」 ~ 部室で座っている彼の耳元でそっと囁いてみる。 ~ 「なっ、なんのことだ」 ~ 素知らぬ顔をした彼の頬が、少しばかり赤い気がした。 ~ ~
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