*キョン古 阿仁谷ユイジの漫画より [#q7d94c06]
~
いつものように、俺は部室で古泉とゲームに興じていた。~
バックギャモンとかいうやつだ。古泉が言うには、紀元前より存在する化石のようなゲームらしい。~
長門は窓辺で分厚いハードカバーを読み、朝比奈さんは二杯目のお茶をいれるのに忙しい。~
ハルヒはどこで何を企んでいるのか、部室にはまだ現れていない。~
俺が二つのサイコロを振っていると、古泉がこんなことを言い出した。~
「あなたは『超ひも理論』というものをご存じですか? この理論によると、万物は振動する小さなひもで構成されているんです。まあ、ひもの存在は実証されていませんし、観測も不可能らしいのですが」~
俺は古泉の爽やかハンサムスマイルをねめつけた。何が言いたいんだ、こいつは。~
「ビッグバン以来、ひもは結合と再結合を繰り返しているんです。つまり、僕もあなたも以前は何か同じ物質を構成していたひもだったかもしれないんですよ。面白いと思いませんか? ひもの振動は宇宙を奏でるシンフォニーなんです。僕やあなたや涼宮さんがここにいるのも、ひも同士の共鳴によるものかもしれませんね」~
告白しよう、お手上げだ。俺は窓辺にいる長門を見た。~
石仏のように微動だにしなかった長門は、俺の視線に気づいたのか、しばらくしてから顔をちょっと上げた。~
「あなたが理解できないのも無理はない」~
そうなのか?~
「現在の人類の科学では多次元的に展開する宇宙の構成を完全に把握することは不可能」~
何かさらりと大事なことを言われたような気がする。だが、長門はそれ以上説明する気はないようだった。~
首をかすかに下に向けると、また視線をページに戻してしまった。~
俺は溜息をついた。SOS団の下っぱ団員というのも疲れるもんだぜ。~
超能力者と宇宙人製有機アンドロイドがいっぺんにおかしなことを言い出すんだからな。~
俺はサイコロに手を伸ばしかけて、ふと古泉の駒が動いていないことに気づいた。~
目を上げると、古泉がニヤついた表情でこっちを見ていた。~
その微笑は毎度おなじみ少年アイドルか何かのような胡散臭さだが、俺と目があったとたん、頬が少し引きつったのも事実だ。~
まるでゆるんでいた気を引き締めたような、そんな感じだ。~
俺はサイコロを鷲づかみにすると、古泉の前に放ってやった。お前の番だろうが。~
「ああ、これは失礼しました。つい「ひも理論」に気を取られていたようです」~
古泉は胡散臭さ二十パーセント増量中の笑顔で詫びると、サイコロを振った。~
~
その夜のことだ。俺はいつものように自室のベッドで眠りについた。~
――はずだった。気がつくと、俺は横たわる古泉に馬乗りになっていた。~
古泉は布団の中で、目を閉じたまま眉間にしわを寄せている。~
そりゃ、そうだ。俺が乗っかってるんだからな。~
俺は暗闇の中で自分の掌を見てみた。透けていた。まるでところてんか何かのように半透明だ。~
そのとき、古泉がぱっと目を覚ました。俺はあんぐりと口を開ける古泉を見下ろした。~
古泉はしばし俺を凝視したあと、俺を払いのけるように手を伸ばしてきた。~
どうやら、幽霊か何かだと思っているようだ。~
驚いたことに、古泉の手は俺を払いのけることなく、俺の腹の中にずぶりと埋まった。~
腹の中に古泉の手を感じるのは、何とも言えない気分だった。~
まるで内臓を裏側からくすぐられているような、名状しがたい感触だ。~
太ももがしびれるとこなんかは、自慰行為の際の感覚に似ていなくもない。って、俺は何を言っているんだろうね。~
古泉は半身を起した姿勢で、手をゆっくりと引き抜いた。俺の体がずちゃりと音を立てて糸を引く。~
太ももの内側がぎゅっと締まり、腰がかすかに震えた。そういえば、しばらく抜いてなかったな。~
俺がぼーっとした頭でそんなことを考えていると、古泉が俺の右腕をつかんだ。~
「あの、さ、触ってもいいですか?」~
何を言ってるんだろうね、こいつは。俺が許可するかしないかなんて、お前にとってはどうでもいいことなんだろ。~
現に、お前はもう俺の下腹部をまさぐってるじゃねえか。~
「嫌なら拒否してください」~
古泉が切羽詰まった声色で言う。~
俺はさっきから頭の中で光が閃いているせいで、返事を返す気力など素粒子ほども持ちあわせてはいなかった。~
「いえ、やはり拒否しないでください。お願いします」~
こいつのこんな声を聞くのは初めてだな。今にも泣きそうだ。~
「どこですか……ここ? ここですか?」~
古泉が俺の硬くなったナニを握った。俺は不覚にも、びくんと身体を弾ませて古泉にしがみついた。~
「これですね? 勃ってる……」~
古泉が息の多い声で囁いた。俺は反射的に、思ってもいないことを口走ってしまった。~
いや、頭の隅では考えていたのかもしれない。いつも自分を慰めるときにするようなことを、古泉にしてもらいたかったのかもしれない。~
「え、何ですか? やめたほうがいいでしょうか? あなたはこういうことはお嫌いですか?」~
そんなことを言いながらも、古泉は俺のナニをしごいている。忌々しいことに、それは勢いよくそり返り、怒張していた。~
俺はのどの奥から漏れるあえぎ声を必死でかみ殺しながら、もう一度さっきの文句を繰り返した。~
「すいません、もっと大きな声でお願いします」~
古泉が真剣な顔で促す。俺は古泉の耳に口を寄せると、そっと囁いた。~
「さ、先っぽのとこ、もっとグチャグチャってしてくれ」~
そのとたん、俺自身から先走った汁が飛び出した。~
「うわ、何ですかこれ。もしかして、いきますか?」~
「んっ、もうすぐ。すごくいい……っあ、古泉、そこ、ああっ!」~
「こっちを向いてくださいませんか? いくときの顔を僕に見せてください」~
「っんう、ぐしゃぐしゃだから、らめ」~
あろうことか、俺の舌は役立たずのふぬけに成り下がっちまった。~
つばを飲み下したのか、古泉ののどがごくりと鳴った。~
「お願いします、顔を見せてください」~
「はぁぁっ、ああっ、もうらまれ、古泉、んっ、んぅっ……」~
俺は古泉の手の中に射精した。ナニがすべての精液を吐き出すと、俺は虚脱感に促されるまま、古泉の肩に額をのせた。~
そんな俺の背中を、古泉がいたわるようになでる。~
「全部出ましたか?」~
「んー……」~
「あの、ご、ごめんなさい」~
なぜこいつが謝る必要があるんだろうね。俺はある確信をもって古泉の顔をのぞき込んだ。~
「なあ、古泉って俺のこと好きだろ?」~
「え、ええ――」~
古泉の狼狽した顔は見ものだった。~
写真にして学校中の掲示板に貼れば、こいつを慕う女子生徒の数が半減するのではなかろうかというほどのヘンテコな表情だった。~
~
そこで目が覚めた。~
俺は暗い天井を見つめ、それから下着がねばついていることに気づき、ベッドの中でのた打ちまわった。~
なんてこった。俺は夢の中で古泉に手コキされた上に夢精しちまった。~
ぐあ、今すぐ首つりてえ!~
結局、俺はまんじりともできずに朝を迎えた。~
~
部室のドアを開けると、じっと両手を見つめる古泉がいた。~
ハルヒはとうの昔に団長机に鞄を放り、朝比奈さんにお茶を要求している。~
長門は相も変わらずの定位置だ。俺は古泉の向かいに腰かけた。~
「『じっと手を見る』って誰かの詩か何かになかったか?」~
古泉の肩がびくっとはねたように見えた。だが、顔を上げた古泉の表情はいつも通りの営業用スマイルだった。~
「石川啄木ですね。『はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢっと手を見る』」~
「それはいいとして、なあ、古泉」~
俺は古泉を正視できずに目をそらした。~
「何でしょう?」~
「俺、昨日すごい夢を見たんだよ。お前、俺に何か言うことがあるんじゃねえのか?」~
だめだ、思い出しただけでも顔がほてってくる。こんなツラ誰にも見せられねえな。~
「いえ、何もありませんが?」~
古泉の声はいたって平静だった。俺はなんだか、一人だけ気まずい思いをしている自分がばかばかしくなった。~
「そうかい」~
俺は短く吐き捨てると、部室のエンジェル朝比奈さんからお茶を受け取った。~
古泉も「ありがとうございます」などと礼を言っている。~
お前の存在なんか、朝比奈さんがいれてくれたお茶の出がらし以下だ。~
わけもなく腹が立って、俺はいれたての熱いお茶を一息に飲み干した。~
~
その日、古泉はバイトがあるとか何とか言って早々に帰っていった。~
俺はハルヒたちが帰ったあとも部室に一人残った。むしゃくしゃして仕方がなかったせいだ。~
このまま頭を冷やさずに帰れば、壁に穴のひとつでもあけてしまうだろう。~
俺だって健全な男子高校生だ。無駄なパワーを持てあましたところで誰が責められよう。~
グラウンドからは野球部のノックが聞こえてくる。毎日毎日、ご苦労様なこった。~
そんなことを考えているうちに、俺はいつの間にか眠っていた。~
~
古泉は制服姿のまま、八畳くらいのせまい和室に寝転がっていた。~
バイトなんてどうせ嘘だろうとは思っていたが、当たりみたいだな。~
俺は一緒に横たわりながら「よう」と声をかけた。~
「あ、あなた、いつの間に……!」~
古泉は一瞬のうちに壁際まで飛びのいた。俺は自分の手を見た。~
半透明だ。制服も透けている。ということは夢か。~
「触ってみろ」~
俺は古泉に片手を差し出した。これは俺の厄介な夢だ。それを夢の中の住人のこいつにも知らせてやりたかった。~
古泉は俺の左手に、恐る恐る右手をあわせた。とたんに、古泉の手は俺の左手をつき抜け、俺の胸の中に埋まった。~
「ほら、な?」~
古泉が俺の胸から手を引き抜く。俺の身体は唾液のように糸を引いた。たちまち、得も言われぬ快感が俺を襲う。~
「参りましたね」~
そう言った古泉は、好物を前にして「待て」を命じられた犬のように瞳をうるませていた。~
古泉は俺に覆いかぶさると、胸の中にだぷっと手を沈め、そのままずぬーと下に動かした。~
俺のナニはすでに硬くなっていた。古泉はそれを握りしめると、ぬちゃぬちゃと音を立てながらしごいた。~
俺はあまりの気持ちよさに、何度も古泉の名前を呼んだ。~
~
気がついたときにはもう遅かった。制服のズボンの股間の部分に、うっすらとシミができていた。~
俺は一挙に押し寄せてきた自己嫌悪の念に包まれ、しばらく身動きできなかった。~
長門に相談しようか。いや、それだけはだめだ。こんな夢を知られるわけにはいかない。~
それに、長門にはなるべく負担をかけたくないしな、うん。~
俺は長い長い溜息をついた。~
~
次の日も古泉はじっと手を見ていた。~
俺はオセロの石を引っくり返し終えると、「古泉、お前の番だ」と声をかけた。~
古泉はいつもの微笑をたたえると、白い石を盤上に置いた。今まで真顔だったことには気づいてないのかね。~
お前、何か困ってることでもあるんじゃねえか?~
「いえ、何もありませんが。ですが、お心遣いはありがたく頂戴いたします」~
古泉は、営業用スマイルにはちょっと勝てカテゴライズできないような、妙な笑顔を見せた。~
古泉は、営業用スマイルにはちょっとカテゴライズできないような、妙な笑顔を見せた。~
お前は何種類の笑顔を持ってんだ。~
「僕だって時と状況と相手に応じてセリフや表情を変化させますよ」~
それは結構なこった。心配しちまって損した気分だぜ。俺のほうがよっぽど相談に乗ってもらいたいってのによ。~
「これは失礼しました。それで、ご相談というのは何ですか?」~
ここんとこ毎日、変な夢ばっか見るんだ。~
すると、古泉は苦笑した。~
「まあ、ジークムント・フロイトによれば、夢というものはすべてリビドーの表れだそうですから」~
だから俺はこんなに困ってるんだろう、とこれは心中でつぶやいた言葉だ。~
古泉はモデルじみた完璧な笑顔をたたえて、まるで何もかもわかっていると言わんばかりの態度だ。~
俺は黒い石を盤上に荒々しく叩きつけた。俺の圧勝だった。~
~
その日の夜、俺はひざの上に古泉の頭をのせていた。~
古泉が力をこめるせいで、その顔はどんどん俺の中に沈んでいく。~
苦しくなったのか、古泉が顔を上げた。~
「僕は卑怯な人間です。卑怯で臆病でどうしようもない人間です。いっそ、このまま混ざりあえたらいいんですがね。溶けて消えてしまいたい気分ですよ」~
古泉は切なそうに目を伏せると、俺のひざを指でなぞった。~
「じゃあ、混ざりあってみるか?」~
俺がこんなことを言ったのも、ある考えが脳裏に閃いたからだ。~
これが天啓ってやつかね。あまりの突拍子のなさに、俺はそう思わざるを得なかった。~
俺は古泉のパジャマのズボンに手をかけた。~
古泉は「いえ、自分でできますので」と俺を制止すると、ズボンを下着ごと足首まで引き下げた。~
古泉のナニは完全に勃っていた。俺はそれに右手をかぶせた。~
「何が始まるんですか?」~
「いいから、目を閉じてろ」~
俺は命令すると、古泉の亀頭を掌につき刺した。掌がぐににと伸び、限界までくると水風船のように弾けた。~
「な、何ですか、これ?」~
目を閉じろと言ったのに、古泉は目をみはって自分の股間を見つめている。~
俺は根元まで掌を押し下げると、今度は上に向かって動かした。~
「す……っごいです、こんな……」~
古泉は声を出さないように、自分で自分の口をふさいでいる。~
俺が手を上下させるたびに、古泉のナニは血管を浮き立たせ、先から汁をにじませた。~
「気持ちいいか? セックスしてるみたいだろ」~
俺は一度、右手を引き抜いた。片手だけとはいえ、それなりの快感が俺にも押し寄せていた。~
古泉は今や、爪を畳につき立て、顔を朱に染めている。~
「き、気持ちいいです……は、やく」~
古泉が催促するように手を伸ばした。~
俺は古泉が取り乱すめずらしい様子をもう少し眺めていたくて、指先で血管をなぞるだけにとどめた。~
「……お、お願いします、もう、んんっ」~
俺の左肩を古泉がつかんだ。その瞬間、古泉は達した。~
白濁した液体が俺にかかる。俺は古泉の精液と、ふさがっていく自分の身体を見下ろした。~
古泉は涙を浮かべた目で俺を見つめるだけだった。~
~
翌朝、俺は息苦しさに目を覚ました。~
起きようとしたとたん、視界がぐらりとかしいだ。俺はベッドに片手をつくと、呼吸を整えた。~
なんだか、胸が痛む。俺は自分の胸をまさぐってみた。変な違和感にスウェットを脱ぐ。~
そのまま机の引き出しをひっかきまわし、俺は鏡を見つけた。~
仰天したことに、鏡の中の俺の胸には、手の跡がくっきりと浮かび上がっていた。~
それは左肩から始まり、そのまま一本の線になって胸を袈裟斬りにしていた。~
俺は鏡を取り落とした。夢じゃなかった。~
やっぱりという思いが頭をもたげる。~
俺は右手を見た。ちょうど勃起したナニに貫かれたような傷痕が、そこにはあった。~
~
右手に包帯を巻いて登校した俺に、ハルヒはうるさく理由を訊いてきたが、俺がシャミセンに引っかかれただけだと答えると、つまらなさそうに顔を背けてしまった。~
その日の放課後、俺と古泉はいつものように廊下に出て朝比奈さんの着替えを待っていた。~
だが、俺の忍耐力もここまでが限界だった。~
授業中、ずっと健康なふりを装ってきたのだ。むしろ自分を褒めたたえてやりたいね。~
俺は立っているのもつらくなり、壁に背中をもたせてしゃがみ込んだ。~
「どうなさいました? 大丈夫ですか?」~
古泉が心配そうに訊いてくる。その顔は以前よりもやつれたように見えた。~
「いや、普通に結核にかかっただけだから」~
「それは一大事です、今すぐ病院に行きましょう。タクシーを呼びますから」~
古泉は早口にそう言うと、携帯を取り出した。~
俺はその手を押さえ込んだ。古泉の身体がびくっと硬くなる。~
「冗談だよ」~
「ですが、あまり健康そうには見えませんよ?」~
「お前のほうこそ、具合悪いんじゃねえの?」~
「いえ、僕は何ともありません」~
あからさまな嘘を否定しようとしたそのとき、盛大なせきが俺を襲った。~
まずいな、やっぱり長門に相談したほうがいいか。~
「せめて、保健室へ行きましょう。さあ、肩を貸しますからつかまってください」~
俺は差し伸べられた古泉の手を払いのけた。~
「保健室なんか行ったって治んねえよ。俺の魂いためつけてんのはお前じゃねえか」~
古泉は笑わなかった。悲しそうに俺を見ていたかと思うと、いきなり背を向けて歩き出した。~
「涼宮さんには急なバイトが入ったとお伝えください、お願いします」~
そう言い残して、古泉は階段を降りていった。~
~
俺はハルヒに、シャミセンが下痢をして妹が助けを呼んでいると告げると、一目散に校舎を飛び出した。~
古泉のアパートには前に一度いったことがある。~
『機関』の待遇はそんなに悪いのかと疑わざるを得ないような、木造ボロアパートだ。~
俺は錆びた階段を上がり、古泉の家のドアを叩いた。~
「古泉、古泉」~
中からの応答はない。俺はガチャガチャとドアノブをまわした。~
すると、かちゃんと手応えが返ってきた。俺はそっとドアを引いた。~
ドアはすんなり開いた。今の衝撃で錠が外れたようだった。~
長門のマンションに居候させてもらったほうがいいんじゃないのかね、と心の中で提案しながら、俺は中に入った。~
後ろ手にドアを閉め、いつもの習慣で鍵をしめる。~
「古泉?」~
やはり、応答はなかった。俺は靴を脱ぐと、これもいつもの習慣で下駄箱にしまった。~
台所と居間をしきる曇りガラスの引き戸を開けると、そこは八畳の和室があるきりだった。~
俺はあぐらをかいて古泉の帰りを待った。~
三十分ほどたったころだろうか。鍵をまわす音がして、ドアが開いた。~
古泉は居間に顔を見せると、「あなたにこんなことを言うのもなんですが、彼はこれが夢ではないと完全に気づいてしまったようです」とつぶやいた。~
一瞬、わけがわからずに何も言えないでいると、古泉がひざにどさっと倒れ込んできた。~
「いっそのこと殺してください。僕はもうだめです」~
古泉はそこではたと何かに気づいたようだった。不思議そうに俺の身体をまさぐると、がばっと起き上った。~
「あ、あなた、本物……」~
俺はこぶしを握ると、古泉の整った顔を殴った。古泉が仰向けに倒れる。~
「ほら、やっぱり隠してたんじゃねえか。ちゃんと言うまで待ってやってたのに、逃げ出しやがって、この野郎」~
古泉は腫れた頬に手を当てて、呆然と俺を見つめている。~
「古泉、これはどういうことなんだ? お前ならちゃんと説明できるのか?」~
俺は古泉に詰め寄った。古泉は俺を見上げたまま動かない。俺は限界まで顔を近づけた。~
まったく、なんで俺がこんなことをせにゃならんのかね。~
「い、いえ、僕にも理由は定かではありません」~
古泉は目をそらしたまま答えた。もう一発殴られたいのか?~
「本当の理由を言えば、僕を好きになってくれるんですか?」~
俺が固まった隙に、古泉はせきを切ったように一方的に話し出した。~
「ならないでしょう。だって、僕は男です。いつも涼宮さんがうらやましくて仕方ありませんでしたよ。彼女はかわいらしい女の子ですからね。僕は男だというただそれだけの理由で好きになってもらえない。なってくれないでしょう……」~
最後は蚊の鳴くような尻すぼみの声だった。くだらねえ。~
俺はシャツのボタンを外すと、手の跡を見せてやった。~
「俺はお前に身体中ひっかきまわされたってのに、自分だけ逃げてんじゃねえよ。お前がそうやって逃げまわってたら、まるで俺のほうが好きみたいだろうが」~
だから、これ以上身体がズタボロになる前に、ちゃんとコクってくれ。~
話はそれからだろ?~
だが、古泉は顔を赤くしたまま何も言わない。ほら、早く。~
「すみません、好きです」~
まあ、わかってたけどな。俺はニカっと笑うと、古泉の頭をなでてやった。~
「よくできました」~
いつも劣等感ばかり感じさせられているのだ。~
こういうときぐらい、古泉を馬鹿にしたってバチは当たらないだろう。~
「ご褒美にお前に俺の返事を選ばせてやる」~
俺は古泉の前に指を一本立てた。~
「一、古泉を振る」~
古泉の顔から血の気が引くのが面白いほどよくわかった。俺はもう一本、指をつけ加えた。~
「二、勢いあまってこのままエロいことをする。どっちがいい?」~
「そ、そんなの……」~
古泉はかすれた声で言うと、俺のピースサインを握りしめた。~
「二択になってません」~
~
俺は古泉のズボンを引き下げると、指をなめた。~
古泉が驚いたような顔をしているが、構ってなどいられない。~
こっちはそれどころじゃねえんだ。なんたって初めてなんだしな。~
しかも、その相手が男ときている。古泉のナニはでかいし、俺のケツに入るわけがない。~
したがって、俺が上だ。な、証明は見事に成立してるだろ?~
「ええ、まあ、確かに……」~
古泉は浮かない顔で首肯した。俺は古泉のケツの穴に指を挿し入れた。~
そこはすぐにもう一本入れられるほど簡単にゆるんだ。~
「つーか、古泉ってほんとにホモなんだな。すごい簡単に指になじんでるんだけど」~
俺は指を引き抜くと、古泉の太ももに舌をはわせた。古泉のナニははちきれんばかりに怒張している。~
「たかが指マンでここまでビンビンになるのかよ。しかも、先っぽ濡れてるぞ」~
「……ちょっと、お願いしますから、だ、黙っていてください」~
古泉が泣きそうな顔で懇願する。俺は古泉の足からズボンと下着を脱ぎ取った。お前も何かしゃべればいいだろ。~
「そ、そんなこと言われても……」~
俺は硬くなったナニを握ると、古泉の肛門に当てた。俺のナニは飲み込まれるようにして中にすべり込んだ。~
古泉がびくんびくんと身体を震わせる。俺も夢の中以上の刺激に、頭が吹っ飛びそうだった。~
「はっ、い、いきそうです……」~
はええよ。~
「ですが、もう無理です。中でどんどん太く……あっ、そんな奥に……」~
俺はゆっくりと腰を動かした。だが、古泉の中は熱い上にきつく、俺もすぐにいってしまいそうだった。~
古泉はブレザーの襟をかんで声を押し殺している。~
「つーか、顔を隠すなよ。あと、声も出せ。夢のときと同じようにしろよ」~
俺は古泉の顔を無理やりこっちに向かせた。古泉は顔を背け、俺の手を払いのけようとする。~
ブレザーをかんでいない古泉の口からは、小さなあえぎ声が漏れていた。~
声がエロいんだよ、この野郎。俺は古泉の亀頭に親指をぐりぐりと押しつけた。~
「っん、はっ、あ、そんな、全部出ちゃいます……」~
古泉はいやいやをするように、首を横に振った。指の下からは汁がびゅくびゅくと溢れ出いている。~
ナニが強い力で締めつけられ、腹をはい登る快感に俺は目を閉じた。馬鹿、せまいんだよ。~
俺はとうとう我慢できなくなり、古泉の中に精液を放った。~
同時に、古泉もいった。~
「……あなたとこんなことができるなんて、まるで夢のようです」~
「正夢だろ」~
俺は息を吸うと、上目遣いでこっちを見ている古泉の額に、自分の額をぶつけた。~
そのまま唇を近づけると、古泉のほうから舌を入れてきた。~
俺たちは息苦しくなるまで、互いの舌をむさぼりあった。~
「しかし、僕は今回の件に関しては、本当に理由がわからないんですよ」~
唾液の糸を引きながら、キスの合間に古泉はそう言った。~
それはあれだろ、ひも何とかってやつだ。~
「『超ひも理論』ですか?」~
俺は古泉の口から糸をなめとってやった。すかさず、古泉が俺の口を奪う。~
えーと、俺は何を言おうとしてたんだっけね。~
「つまり、お互いに共鳴しあってたんだろ」~
はい、証明終了。~
「証明になってませんよ」~
古泉がおかしそうに笑った。~
爽やかハンサムスマイルではない、本物の笑顔だった。~
この笑顔が見られたんだ、万物を構成するひもとやらにも感謝してやってもいいかもしれん。~
俺がそんな気持ちになったっておかしくはないだろ?~

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