神人(偽キョン)×古泉

 

神人が動き回る鈍い音と周りでガラガラと建物が崩れる音が
合い混ぜになった不協和音が響く。
「ぐっ…!」
高層ビルにおもいっきり叩きつけられた僕は
呻く事しか出来ずその場に倒れこんだ。
その時点で僕は異変に気づくべきだった。
閉鎖空間なのにも関わらず、今この瞬間に赤い光球の形を僕は保っていなかった。
おかしい。今日の閉鎖空間も神人もいつもと様子が違うように感じる。
重たい空気と青白い光が徐々にこちらに近づいてくる。
先程の衝撃に身体がついていけないのか僕はこの場から動けない。

———マズイ、ヤラレル。

次に来るだろう一撃を予想し、反射的に目を瞑った。
だがその衝撃はいつ経っても来ない。恐る恐る目を開けると
そこには見知った顔で呆れたように笑う彼の姿があった。
「なっ!?なんであなたが…」
驚愕の表情で彼を見上げる。
違う違う違う違う違う!コレは間違いなく神人だ。
しかし今までに神人が誰か別の人間に姿を変えただなんて事があっただろうか。

「んんっ!?」
本当に一瞬だった。驚いて硬直している僕の両腕を拘束し
そのまま僕に覆いかぶさって来た神人は
彼の姿のまま勢いにまかせて僕の口塞いだ。
これは彼ではない。彼ではないのに彼の感触がする。彼の匂いがする。
密かに彼に恋焦がれていた僕にはそれだけでたまらない刺激になった。
頭の中では彼ではないと認識していても、彼の存在を感じてしまいくらくらしてしまう。
しかし僕の腕を拘束する力だけは明らかに彼のものではなかった。
抵抗を試みるがビクともしない。
普段あれだけ大きい神人がちっぽけな人間の姿にまで凝縮されたのだから
この測り知れない力の強さも当然なのかもしれないが。

僕が大した抵抗が出来ない事を分かったのか
神人はそのまま舌を差し入れてきた。
何度も何度も逃げる僕の舌を絡めとるように口内を犯してくる。
「はっ…はぁ…んっ!ん…やめ…ぅ…」
ぴちゃぴちゃと生々しい音と互いの荒い息遣いが耳に響く。
ただのキスなのに甘い。何故か唾液が甘く感じる。
流し込まれるようにされるそれを僕は飲み干すしかなかった。
夢にまで見ていた彼との激しい口付けに脳が痺れる感覚を覚える。
ようやく唇が開放されたものの、
息がすっかり上がってしまい僕のキャパはいっぱいいっぱいになっていた。
「うあっ!?」
あろうも事か神人は僕のズボンを力まかせに下げると
すっかり勃ち上がっていた僕の下半身を握り締めてきた。
そのままぐちゃぐちゃ音を立てて乱暴に扱き始める。
先程の口付けで興奮してしまっただけにダイレクトに快感が脳に伝わる。
「ああっ、ア、やめ…てくださ…!やめ、やめろ!!」
これ以上気持ちを弄ばれる事に耐えれなかった。我を忘れて叫ぶ。
空いた方の左手でおもいっきり彼の頬を殴っていた。

「あ…」

僕の爪が神人の皮膚を傷つけたのかの口元から血が流れる。
例え偽者の彼と分かっていても、
自らの手で彼の大切な顔を傷つけてしまった事に戸惑いを隠せない。

僕と目が合った神人は殴られた事などなんでもないように
口元から流れる血を舐めると、僕の大好きな彼の顔で不敵に笑った。

「っ…」
なんともいえない感覚が背筋を這い上がっていく。そして本能で理解する。


———————コイツには敵わない…と。

さっきの抵抗が最後の抵抗らしい抵抗だった。
彼に胸の突起を舐められ下半身をいいように嬲られ続けてしまった僕は
彼の感触と与えられる快感に悶え
せめてもと熱を逃がすように喘ぐ事しか出来ない。
「ア…んあっ…!も…」
イキたくって仕方ないのに彼の指は根元をきつく握りしめたまま離さない。
「ほら?どうして欲しいんだよ?言ってみろよ。古泉」
な…!?
この神人は話す事が出来たのか。しかも彼と全く同じ口調で。

「や!あっ…こ…この!」
悔しくてたまらない。でも彼の姿をした神人に対して抗う術を僕はもう持っていなかった。
「お前が素直にならないならずっとこのままでも俺は構わないけどな」
ぐりっとおもいっきり亀頭部分に爪を立てる。
「イっ!?ああ!や…」
あああ、頭がおかしくなる。助けて。タスケテ。

神人は手は動かしたまま僕の耳たぶに噛み付き
そのまま息を吹きかけるように囁いた。
「なぁ?気持ちいいだろう?一樹?」
「ひぁっ」

彼が僕を名前で呼んでくれた事など一度もない。
それだけに今までのどんな愛撫よりも強烈だった。

気持ち良くって悔しくてプライドがズタズタにされる。
でも彼に愛されているような錯覚を覚えられずにはいられない。
どうしようもない気持ちに挟まれ狂ったように首を何度も振った。
耐え切れずに目から涙が流れるのを堪えられなかった。


止めを刺すかのように僕が彼に一番望んでいた言葉を神人は耳元で囁いた。

「…お前が好きなんだ。一樹。」
「うあ!や…!ああああああ!イ、イク!イキた…!」

どうして。どうしてコイツは僕の望んでいる事がこんなにも分かるんだ。

懇願の言葉を聞き入れた神人は根元を戒めていた指を離し、
唾液をだらしなく零す僕の口を彼の口で塞ぐと
僕の性器を痛いぐらいに擦り上げた。
何色もの絵の具がぶちまけられたような視界はやがて白一色に染まり

「——————…っ!」

声なき悲鳴を上げて僕は達してしまっていた。

「っ…はぁ…はぁっ…は…」
今までに味わった事のない快感の余韻で
犬のように無様に呼吸する事しかできない。
白く塗りつぶされた視界が少しずつクリアになっていく。

まだ息が整わない僕の上に被さっていた彼が
鼻と鼻がつくような距離まで顔を近づけてきた。


はは…顔が近いですよ。ああ、これはあなたのセリフでしたね。


「まさかこれで終わりって思ってないよな?愛してるよ。一樹」


彼は僕を狂喜と絶望に一度で陥れるような言葉を囁き、眩暈がする位に綺麗に笑った。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:20:47