≪古泉×キョン エロ≫


小窓から月明かりの差し込む小さな部屋で、俺と古泉は寝転んでいる状態で向かい合っていた。
畳に敷かれた蒲団は万年床なのか、帰ってきたときからそこにあった。
だが湿っていたり汚れているわけではなく、定期的に干してあるのか
手をつくとフカフカと柔らかい。
意外とマメな性格なのか、それとも誰かがいちいち面倒を見ているのか。
やはり緊張しているのかつまらないことばかり考えてしまう。
首を振るとくだらない思考はどこかへ飛び、
ふと視線を上げるとこちらを見ている古泉の視線とかち合った。
「何を考えていたんです?」
めざとく囁くと、古泉は慣れたように俺の耳たぶを唇で挟んだ。
その間にもネクタイを外す手がするりとボタンとボタンの間に忍び込んでくる。
ひんやりとした指先に思わず体が波打つ。
「……別に」
「情事の最中に上の空ですか。あなたも大概失礼な人ですね」
責めるように舌を耳の中に捻じ込んでくる。
「やっ……めろ」
「やめてもいいですが……本当にやめてもいいんですか?
ここを弄られるのが好きなんでしょう?」
「……んっ」
「あなたのやめては、もっとと聞こえる」
産毛の一本一本をなぞるように掌がうなじを覆い、ゆっくりと背骨を辿っていく。
指先を何度も上下されると、それだけで声が出た。翻弄される。
息苦しさを覚えて中途半端に外されたままのネクタイを襟から抜き取ろうとし、両手を持ち上げた。
「勝手に動いちゃだめですよ。いつ許可しました?」
両手をからめ取られ、そのまま蒲団に縫い付けられる。指先が畳縁に触れた。

「ネクタイが苦しい……」
「じゃあ僕が取ってあげますよ。そういえば忘れていましたね」
微笑む古泉の首元にネクタイの影はない。まったく乱れていないシャツがあるばかりだ。
薄暗い部屋の中で白いシャツは薄ぼんやりと光っているようで何よりも目を引いた。
古泉は俺の両手首を掴んだまま上体を屈めると、解けかけているネクタイの結び目を噛み、
ゆるゆると引っ張った。古泉はまるで犬のようだった。
両手の存在を忘れたように、口のみで作業を進める。
そして時折思い出したようにボタンの隙間から舌を差し込むと、
汗ばんだ素肌をちろちろと舐めた。
「あぁっ……」
だんだん感覚が麻痺していく。
同性に組み敷かれているという屈辱も、両手首の痛みも、
全てが夢のようにおぼろげとしてくる。
それなのに古泉の舌だけが熱く、俺の冷えた体をこじ開けようと何かを急かしていく。
いつものようにさっさと済ませればいい。その気になれば
ズボンと下着を下ろすだけで行為は事足りる。
実際、今まではそうしてきた。それなのに今日の放課後、突然家に来ないかと誘われたのだ。
古泉の家に行くのはもちろんはじめてだったし、あからさまに誘われたも同然だった。
断ることもできたはずなのに、俺は断らなかった。
こんなふうに抱かれるであろうことは目に見えていたはずなのに……。
「また考え事をしていたでしょう。あなたの場合はすぐにわかるんですよ。……ああそうだ。
そういえばこれにはこういう使い方もありましたね」
そう言うや否や、古泉はしゅるりとネクタイを抜き去り、
それであっという間に俺の両手首を縛り上げた。
「な……やめろ、さっさと解け!」
「一体誰のことを考えていたんですか」
古泉は耳元に顔を寄せると、息を吹きかけるように囁いた。
「僕はずっとあなたとこんなふうにセックスしてみたかった。あなたもそうじゃないんですか?
それとも僕だけでしょうか、こんなに暴力的な気分になっているのは……」

古泉の整った指先が荒々しく動き、シャツのボタンを外していった。
あまり他人に見せたくないどちらかというと貧相な体が露わになり、今更だが赤面する。
「やるんならさっさと済ませろ」
「そうですね。あなたが感じるところを順々に上から下へ舐めていきましょうか」
「……っ」
こうなってしまえばもう嫌がらせでしかない。
ただ単に性欲を発散させたいだけなら、もっと手っ取り早い方法で済ませればいい。
なぜ俺は古泉の家に来てしまったのか。本当に今更ながら後悔する。
こんな目に合わずに済むなら、他のどんなことでもやれる気がした。
「……古泉」
「なんですか」
「ズボン下ろせ。舐めてやるから」
「それはありがたい申し出ですね。ですが……」
ですが、何だ。古泉はそこで意味ありげに笑うと、鎖骨のあたりに顔をうずめてきた。
起こしかけていた上半身を慌てて元に戻す。わざと音を立てながら吸い付かれ、
俺はかぶりを振って拒絶の意思を見せたが、古泉は顔を上げようともしない。
「やめ……んっ……」

つっと古泉の手が下半身に触れた。そこはもう随分前にベルトを外され、
ズボンも下ろされていた。
触れられると、下着が薄っすらと濡れているのがわかった。
布越しに何度も擦られ思わず声が出る。
「あっあ!」
「随分濡れてるんですね……。いつもより興奮してるんですか?
部室でやってもこんなにはならないでしょう」
「も……早く……」
「早く、なんですか?」
「終わらせろ……っ」
ひとかたまりになった両手を滅茶苦茶に振り回すと、まるで子供をあやすでもするように
頭を撫でられた。足元にからみついたままのズボンが重い。
下着を下ろされたときに一緒に取り去ってもらえないかと思ったが、
結局下着は足首辺りのズボンと一緒にからまったままだった。
「あ……っ」
直接握られ上下に擦られると同時に乳首を舐られ、俺は耐え切れずに身を震わせた。
「いいですか?」
問われるまま何度もうなずく。何ヶ月か前までは、他人、しかも男に自分のそれを
触らせるなど想像もしなかった。
同性の手で擦られることがこんなにいいとは思いもしなかった。
だがようやく達するという寸前に手を離された。見上げた古泉の顔は意地悪く笑っている。
「っ古泉」
「まだですよ。まだ……」
腹の辺りに冷たいぬるぬるとした感触。薄目を開けると、大量のローションが垂らされていた。
人肌にあたためるように念入りに腹の上でのばしたそれを手にすくうと、
古泉は指先を俺の尻の奥にあてがった。
最初は周りをほぐすように、それから指を一本侵入させる。

「んん……」
「呼吸して……そういい調子ですよ。慣れてきましたね。
最初はまったく指が入らなかったのに今じゃもう指を入れるぐらいなら容易い」
物足りなさを覚える自分を浅ましく思いながら、思わず指を締め付けてしまう。
すると古泉が突然指を引き抜いた。
「できるだけ締め付けないで。どうしても締め付けたくなるまでは我慢してください」
そうして今度は二本、指を侵入させる。探るように荒らすように指がバラバラにうごめく。
どこに快感を発散させていいかわからず、
俺はただ息を荒げ畳に爪を食い込ませるしかなかった。
自由に動かせない両手がもどかしい。
「く……あ……」
「いいですか……?」
「苦しい……っんあ、はあ……っ」
不可解な場所でうごめくものをぐいぐいと締め付けたくて仕方がない。
それでもその欲求を口に出すことは憚られた。プライドが邪魔をしているわけではない。
実際にもう心身は古泉に屈服したも同然だった。
「あっ」
ふいに腕の辺りに引っ掛かっていたシャツを引っ張られ体が浮く。
そのまま引っくり返され四つん這いの状態になった。
二本だった指が三本に増やされ、強引に抜き差しされる。
震える掌を握り締めて歯を食いしばって耐えていると、
腹に残っていたローションが太ももにまで垂れ、
そのうち蒲団に雫となって落ちていった。
「あなたもなかなか強情ですね」

更にローションを足され、いよいよ淫猥な音は激しくなっていく。
ついに耐え切れず、俺は四肢を震わせ叫んだ。
「もう無理だ……!」
「何がですか?」
この期に及んでこいつ……!目の前が真っ暗になった気さえし、
俺は首だけ振り向いて古泉をにらみつけた。
「そんな怖い顔しなくてもわかってますよ。少しからかっただけです。さあ思う存分どうぞ」
古泉の許しが出たところで、俺はそこに力を込めた。
こんなときほど括約筋とやらを意識することはない。
普段は想像もしたくないことを頑張って色々やってくれている筋肉だが、このときばかりは
考えられないほどの快感を生んでくれる。
「あああっ」
「……痛いぐらいですね。引っ張っても抜けませんよ」
「あっんっ、もう、もういく……!」
俺の欲求をよく理解した古泉はそそり立っているそれに触れ、上下に擦った。
「んあぅ……ッ」
その瞬間全身の力が抜ける。肩を上下させて息を整えていると、
古泉がおもむろに俺の汗まみれの顔を持ち上げ、口の周りを舐め始めた。
どうやら涎が出ていたらしい。
「おい……離れろ」
古泉はどこか名残惜しげに顔を離すと俺の髪の毛を撫でた。ふと古泉の下半身に視線をやると、
顕著な変化が現れていた。
「おまえはいいのか。その……」
直接的な表現はどうも苦手なので顎でしゃくると、古泉は驚いたように目を見開いた。
「いいんですか。挿れても」
「そんなことは断じて一言も言っていない。勝手に捏造するな」

両手首はまだ縛られたままなので、肘を使って先ほどの体勢に立て直す。
先ほど古泉が散々弄くっていた部分からローションの名残りが垂れていくのがわかる。
「……ネクタイ取るなり後始末するなりおまえの好きにしろ」
暫く黙っていた古泉だったが、何かを納得したようににっこりと微笑むとベルトを外し始めた。
こいつはまだ腕まくりしただけでまったく服を脱いでいなかったのだ。
そう思うと乱れまくっている自分の姿がみっともなく思えてくる。
「ゴムはあるんだろうな」
「ええそれはもう」
バッチリですよと言いたげに古泉が笑みを投げかけてくる。
まったくこの場にそぐわない爽やかな笑みだ。
自分のそれにもローションをまぶすと、古泉はゆっくりと焦らすように俺の腰を抱えた。
獣のような姿勢で後ろから犯されるその瞬間の、恐怖とも期待ともいえないわななきを
体の奥底から感じた。
「……あぁ……」
大した抵抗もなく飲み込んでいく。一体俺の体はどうなってしまったのか。
完全に拭い去れない痛みや違和感はあるが、それに増して快感のほうが強いとは。
漏らした溜息まで震えている。
「あ……んっああ」
古泉が動き出すのに合わせて、俺の口からは嬌声が漏れ出た。
「……?」
ふいにすぐ横の壁からテレビの音が聞こえてきた。
この部屋の壁は思っていたよりも薄いことを思い出し冷や汗が出る。
「ちょっ……古泉」
「なんでしょう」
わかっているのかいないのか古泉は動きを止めない。
「声を気にしてるんですか?」
「あ、たりまえだろっ……んんっ」
「もう遅いですよ。いいじゃないですか、聞かせてあげたら。
高校生男子の喘いでいる声を聞けるなんてなかなか出来る体験じゃありませんし」
おそらく隣の人はおまえのような変態ではないから、
そんな声を聞かせられても迷惑なだけだと反論しようとしたが、なかなか言葉にならない。

その間にも古泉は律動を速めてきた。蒲団に口を押し当ててもどうしても声は出る。
「やあ……っ!んぅ、はあ、ああっ」
「いっていいですよ」
そのときふいに乳首を引っ張られ、肩甲骨に歯を立てられた。
「ひああ……っ」
今度は前を触れられもせず達した。独特の青臭いにおいが辺りに漂う。
余韻に浸る間もなく、まだ古泉は動きを止めない。
「はあ……あっ」
目の眩むような快感に、俺はついにその場を這って逃げ出そうとした。
すると古泉の腕が首に回され何かで顔を覆われる。すぐに俺のシャツだと気づいたが、
視界を覆われ動きが取れなくなった。しかも袖でしっかりと後頭部に結び付けられる。
「あなたが逃げるからですよ」
強引に体勢を変えられ、抱えられたときに出来た微かな隙間から
あふれ出したローションの熱さに驚く。
向かい合うような形となり、古泉に全体重を預けるように俺は前傾姿勢になった。
古泉の吐く息が直接顔や耳にかかる。それだけでイッてしまいそうだった。
「あっんっああっあああ……!」
再開された動きはあまりにも激しく、目の前で火花が飛び散った。
声の大きさなど気にかけることもなかった。
俺と古泉はその姿勢で果て、そのまま崩れ落ちるように蒲団に倒れこんだ。
そしてぬるぬると滑る体を絡めあって、俺と古泉はその日はじめてのキスをしたのだった。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:17:55