≪古泉×キョン≫


平和な放課後。
ハルヒのけたたましい声響く部活を終え、夕闇に照らされた街中を俺は大変不本意ながら男と下校していた。
全く、この男が純粋可憐な朝比奈さんだったらどれだけよかっただろう。
いまいましい目で古泉をにらみつけているとどうやら視線に気づいたらしい。
「そんなに僕のことが気にかかるんですか?」
うるさい!顔が近い!こっちをそんなニヤニヤした顔で見るな!
そうですか…と苦笑をたたえた古泉の顔に俺は思わず良心の呵責を覚えた。
だがただでさえ学校でも部活動や諸々の機会に2人になることが多く、勘違いされかかっているのに(しかも不純な意味でだ。)、
こんな風に野郎同士が至近距離で面つっつきあわせて街中で立ってるところを見られたりしたら今度はどんなあらぬ噂をたてられることか。
いかん。それだけは避けなければ…。
そんな考えを頭の中で巡らせていると突然古泉は俺の手を握ってきた。
意外なほど冷たい古泉の手に思わずぞくぞくっと背筋が震える。ええい!なんだこの感覚は!!
「少し冷えますね…。」
つながれた手に力が入る。伏し目がちに憂いを帯びた表情はいつものニヤケ顔は影を潜めて、なんだか胸の奥がたまらない気持ちになる。
どうも今日の自分はおかしい。普段は何も感じないどころかある意味不快ささえ感じるはずの古泉の一挙一動にこんなにも反応してしまう。
宵の闇が一層濃くなる街路樹で俺たちはいつもよりずっとゆっくり手を繋ぎながら歩いていた。
傍から見たら明らかに異常な光景のはずなのだがなぜか俺はそんなことをすっかり失念してしまっていた。

「あの…今日、今から付き合ってもらえませんか?」
うっ古泉の突然の誘いに俺は確かに顔が引き攣った。なぜならさっきまでの表情は消えうせ、いつもの偽悪的な微笑みをたたえていたからだ。
こいつがこんな顔している時はろくな事がない…。
いくら今日はおかしな感情が俺をやたら揺さぶってくるとはいえ、さすがに警戒してしまう。
だが、以前の閉鎖空間についてやハルヒについて何か報告があるのかもしれない。
思わずよぎった深刻な事態を危惧する感情に俺は了承の言葉を発してしまった。
「ありがとうございます!ここからなら僕の家に行きましょう。」
も、ものすごく嬉しそうだ。少し足取りが軽いように見えるのは気のせいか?
いや、もしもの事を考えてだな、と俺は足取り重く古泉についていった。
「はーい。到着です。」
機関によって与えられた部屋だろう。嬉々として開けられた扉の向こうには簡素な部屋と廊下が広がっていた。
「意外と質素なんだな。」
思わず率直な感想が口についた。別に豪華絢爛な部屋を想像していたわけではないがその部屋のだだっ広さと家具の少なさのアンバランスさが目についたのだ。
「まぁ、男の一人暮らしですからね、仕方ないですよ。さ、遠慮はいりません。上がってください。」
一瞬苦笑した後古泉は俺を笑顔で手招きしていた。俺は犬じゃねぇ。全く、こいつのこういう動作がいちいち癪に障る。
ぶつぶつ言いながらどうやら居間らしき所に入ると事態は一変した。

体に走る衝撃。顔にかかるのは古泉の茶色がかったサラサラの…髪!!!
古泉が俺を…押し倒してる!?
「なっ…なんなんだ?」
めまぐるしく変化した視界と体に走った衝撃に俺はついていけなくて思わず情けない声を出してしまった。
まだ肩と腰にずきずきと鈍い痛みが走る。目をあげると笑顔の古泉。とまぶしいくらいの蛍光灯の光。さっきよりまた一層嬉しそうな顔をしている。
これは、気のせいだと誰か言ってくれ!俺は今何をされようとしてるんだ!
「キョンくんが悪いんですよ。あんな風に僕をじっと見つめるから…どうしても我慢できなくなる…。」
へっ…?まさか俺があの時至上の天使のような朝比奈さんを求め、一種の憎悪の視線を向けていた時に、
こ、古泉は俺に欲情していたって言うのか!?その後の憂いを帯びたあの表情もみんなその興奮を我慢するため……
合点のいった古泉の行動に納得しつつも、その所作に反応した俺のあの切ない気持ちはどうなるんだ!?
と、自分の先ほどの気持ちが急に恥ずかしくなり、俺は思わずうつむいた。
おかげで迫りくる古泉の顔に気づけなかった。まぁ映画監督もびっくりの急展開に思考を落ち着かせるのは人の当然の行動といえよう。
とにかく俺は自分の思考を整理するのにいっぱいいっぱいだったのだ。
そして一番大きい違和感に気づいた。
そう、俺は男だ!!もちろん世間で言う同性愛者というわけでもない。
まして古泉も男だ。同性愛者かどうかは定かではないが俺によ、欲情するなんて常識的に考えてありえないのだ。
「俺は…ん、むぅ。」
抗議の声をあげようとした瞬間。目の前には古泉の顔。
俺の喋る事と食べる事以外に使われたことない唇には今まで感じたことのない熱さと感触が襲い掛かっていた。

最初は唇をついばむように、十分に堪能したのかそのままゆっくり舌を侵入させてくる。
いくら男にファーストキスを奪われたとはいえ、いきなりのディープキスはちょっとハードルが高いんじゃないのか。
歯列をなぞるようにねっとりと俺の口の中で蠢く古泉の舌に不覚にも俺は感じてしまい、全身の力が抜けていく。
だがふってわいたような息苦しさに俺はおもわずうめき声をあげ、唇を古泉から引き離した。
乱暴に引き離したからだろうか、思わず互いの唇から糸がツッとたれる。
「ふふ、感じちゃいましたか?」
たれた唾液を舌で掬い上げ、笑顔を崩さず問いかけられる。
俺は古泉にいい様にされているのがなんだかくやしくて相手の質問を無視して頭の中でずっとひっかかっていた質問をなげかけた。
「見たら分かると思うが俺は男だ。お前も。」
「誰かに惹かれるのに性別は関係ないと思いますが。」
少し肩を竦ませ髪を掻き揚げる。別にサラサラの髪が綺麗だとか思ってないぞ。俺は男だからな。
「だが、俺は気になる。男を掘るつもりもなければ掘られるつもりもない。」
これが俺のもっとも主張したい事だった。わずかに密着した体から感じる下半身の熱さはこの後の展開を予想させるのに十分に違いない。
「やってみなきゃ何事もわかりませんよ。」
どうしてそうなるんだ!!俺の貞操はこの攻防にかかっていた。
いそいそと俺のシャツのボタンに手をかけるな!
なんとか自由になる両腕で古泉を引き剥がそうと試みるもさっきので力が抜けてしまった両腕はうまく働いてはくれない。
その小さな抵抗に気づいたんだろう。古泉は抵抗されると面倒ですね。とか淡々とぬかして俺の両腕をネクタイで縛り上げてしまった。

足は古泉の体でしっかりホールドされているため動かせない。絶対絶命だ。
古泉はというとシャツのボタンを外し終えたのか次はベルトにまで手をかけている。かちゃかちゃという音が妙に耳につく。
「お、お前、どこ触ってんだよ!!」
唯一の抵抗手段で俺は抗議した。ここはぜひ穏便に話し合いたい。
だがそんな言葉で古泉の手が止まるはずもなく、気づけば俺自身が古泉に握られてしまっていた。
「やっぱりさっきのキスで感じていたんですね。体は正直です。」
古泉の言葉に顔から火が出そうだ。まぁこんなことになるとは想像もつかなかった相手に突然ナニを握られる状況ってのは恥ずかしいそのものかもしれない。
何度も言っておくが俺は男だ。だからこそ古泉の長い指でいじられ、弄ばれると俺のものは生理的に反応してしまうのだ。
我慢しようとしても自慰とは全く違う快感に俺は漏れてくる声を抑え切れなかった。
古泉のやり方は優男な顔と違って強引だった。相手も興奮しているのか、俺のものではない息の荒さを感じる。
「…んっ…やめろぉ…こいっず…みぃぃ。」
必死に紡いだ言葉もうまく文章にはならなくて、ぐりぐりとねじ込まれるような古泉の手淫に俺は必死に耐えていた。
「ふふっどうやらキョンくんはMっ気があるみたいですね。もう僕の手どろどろですよ?」
いやらしい言葉で俺を攻めるな!断じて俺はそんな変態的性癖ではない!
頭の中で抗議しても意味はなく、次第にこみ上げる射精の欲求に俺は思わず息をのんだ。

「も、もう…くっ…でるっ…!!」
はじめて他人から行われる手淫に俺は過剰反応しすぎたのだろうか、意外なほどはやく俺は出してしまった。
誤解を与えるかもしれないが、早漏ではないぞ。それは男としての沽券に関わる。
「キョンくん、意外とはやいんですね。」
だーーー!!誤解だ!って俺の精液をなめるな!汚い!
一通り自分の指をなめおえるとその手で古泉は俺のわき腹をさわってきた。
こそばゆくて思わず身をよじる。古泉の唾液と俺の精液が潤滑油になって俺の肌をすべり、胸に手がかかる。
「いてっ!」
乳首をぎゅっとつねられて思わず声をあげてしまった。
「んー、キョンくんはMなんですからもうちょっとよがるべきです。はい。もう一回。」
今度はもう一方の手でつねられる。体をつきぬけるような痛みに乳首は熱を帯びているのを確かに感じる。
だが俺はMじゃぁない。出てくるのは痛みに伴う小さな悲鳴だけだった。当然だな。
「残念です。でもこれからこれも気持ちよくなるでしょうから。ふふっ。」
おいっこれからってどういうことだ!脳内では非難轟々。
だが身動きを封じられてる今、俺はただ唇を噛み、夕方とはまた違う憎悪の眼差しを古泉に向けるだけだった。

「いやだなぁ。そんなに見つめないでください。僕もっと興奮、しちゃいますよ?」
どんな解釈の仕方をしたらそんなことが言えるんだ!あと俺の乳首をいじるな!いい加減痛いぞ!
視線を下にむけると俺の乳首はかわいそうなことに赤く充血し、ぷっくりとふくれていた。
いきなり強く爪を立てられ、再び鋭い痛みが体を襲う。
そして古泉は俺の散々な目にあった乳首を口に含み舌で転がし始めたのだ。
痛みでじんとしびれた乳首を優しく舌でなぞられる。
「んぁっ」
思わず声が漏れた。
「飴と鞭です。」
こんなところでその言葉は使わないぞ!絶対。
下から俺の乳首を舐めながら見上げてくるその瞳の奥は獣のような熱い欲望をたたえていて、俺は一瞬身震いした。
古泉の影響なのか、俺の胸で時折息を漏らせながらうごめくその茶髪の獣に俺もいつからか興奮を覚えていたのだ。
体の奥がじんとして下半身に熱が集まる。それを悟ったのだろうか、古泉は急に行為を中断した。
「あ…。」
この残念そうな声は俺のか!?別にやめてほしくなかったわけじゃないぞ!
「すっかりあなたも興奮してるじゃないですか。準備もだいぶできてきたみたいですね。」
準備…?俺は思い浮かんではいけなかった発想にさっきまでの熱に浮かされた顔はどこへやら青くなってしまった。

今、攻められているのは俺であって、攻めているのは古泉であって…。(もちろん合意はないぞっ
この後の流れで掘られるのは……
いけない。これ以上は踏み込んではいけない領域だ。
起き上がった古泉に一瞬自由になった足を動かして逃げようと試みる。
すかさず古泉は俺のモノを掴んで乱暴に扱った。
「はぁぁううぅぅっっ!!」
女性には未知数の痛みがそこにはある。失神寸前。俺はあまりの痛みにまともな声も出なかった。
ただ力の抜けていた体を即座に屈ませ、いまだひきずる痛みを耐える。なんとかしたいが腕はまだ縛られたままだ。
涙が溢れた。古泉は俺には見えないがどんな顔をしているのだろう。
ただ俺のモノが古泉に握られたまま震えているのだけが見えた。
そしてまた乱暴に扱きはじめる。痛みを伴う快感ははかりしれない。
「あうう…うぁ…。ふっ…ん…やめ…あぅ…ひっ」
「いぃ声が出るじゃないですか?やっぱり痛い方がいいみたいですねぇ?どうです?これでも逃げたいんですか?」
俺は今、恐ろしい男を相手にしているとやっとわかった。
今までのは頭のどこかでは男同士の性的な冗談でなんとか終わらせられる範疇だったのかもしれない。いや俺は終わらせたかったのだ。
だが古泉は本気だ。全身から冷や汗がどばっと溢れる。からみつくシャツが気持ち悪い。ブレザーはしわになっているだろう。
アイロンをかける俺の身にもなってほしい…という悠長なツッコミもできない。
俺は追い込まれていた。

あまりにも辛い手淫に意識を集中しすぎて(俺のムスコの一大事だからな)、俺は虚をつかれた。
古泉は俺の体をいとも簡単にひっくり返しうつぶせの状態になる。片手は俺の腰をぐいっと持ち上げ、もう一方はいまだに扱き続けている。
上半身が圧迫される体勢に俺は息苦しさと快感からこみあげる声に胸がつぶれそうだった。
「キョンくんのここは綺麗なんですね?思ったとおりです。」
そっと尻の割れ目をなぞられて、背筋に寒気が走る。
反射的に腰を思いっきりひいたつもりだったが俺のモノを扱いていた手でぐっと掴まれてひくにひけなかった。
俺はもう、だめかもしれない。俺の純潔、さようなら。
別れを惜しむ暇もなく、古泉は指をぐっと俺の穴に入れてきた。
「うぁぁぁぁぁ!!!!!」
何もつけずに穴に指なんて異物を入れたらどうなるか?俺の腸はびっくりしすぎてでんぐり返しでもするだろう。
わずかにしか入れていないのにも関わらず、その痛みと圧迫感は半端じゃなかった。
「おや、痛いんですか?あなたのここはそれ以上のものを感じてるみたいですけど…んふ。」
その薄気味悪い笑いをやめろ!!
痛みは俺の快感で鈍った思考をいきなり覚醒させる。バンジージャンプのように意識は鈍り、突然起こされる。
その繰り返しは俺に相当な精神的ダメージを与えているのだろう。
どうにでもなれ!とまではいかないが逃げる気力は無くなっていた。
そのせいか古泉は痣になったら困りますね。と呟きながら俺のぎちぎちになるほどキツく巻かれたネクタイを外した。

古泉もさすがにやりにくかったのだろう。どこに持っていたのかはわからないがローションを取り出し、指に塗りたくりはじめた。
そして再び穴に指が突っ込まれる。俺は二度目のあの痛みを覚悟し、体を強張らせたが一度入れたからだろうか、意外とすんなり入ってしまった。
前立腺。
俺だって思春期の高校生だ。保健の教科書を凝視するくらいはしていた。名称は知っていたし、そこをいじればどうなるかも…。
「はぅっ!あぁぁぁ!!!」
だが体験等した事あるはずがない。俺はこれまでに感じたことのない頭を狂わせるような快感にぶつかったのだ。
今までの局部的にじわじわ感じるものとは全く違う。快楽中枢を直接叩かれるようなその感覚。
古泉は指をいじくりながら、きっとニヤニヤしているに違いない。後で覚えてろ。
俺は予想をはるかに超えた緊急事態に焦りに焦りまくっていた。
古泉が指を入れている限り、その断続的な快感はひたすら続く。俺はわけも分からず叫び続ける。
「そんなに鳴いてくれるなんて嬉しいですね。それじゃ、もうちょっと増やしてみましょうか。」
死刑宣告のように聞こえるその処刑は俺の返事もなく行われ、更にぐっと圧迫感を感じる。
まだイってはいなかったが俺のモノはもう先走りと精液でぐちょぐちょで申し訳ないほどしとどに古泉の片手を濡らしていた。

どのくらい経ったのだろう。俺には何時間もたっているように思えたが実際はそんなことないかもしれない。
ただこの行為もそろそろ終局に向かっていた。多分。
古泉は指を三本に増やし、まるで開拓者のように俺の中をいじくっている。
俺はというとほんとに盛った犬か猫のように上半身はつっぷし、尻だけ古泉に向けて荒い息と媚声をあげ続けるしかなかった。
「もういいでしょう。」
俺は思わず体に力が入った。古泉のずっと入っていた指が抜かれたのだ。
「キョンくんのお尻の穴、ヒクツイてて僕にもっとっておねだりしてるみたいですよ?」
そんな事細かに説明なんて要りません!!
しかし俺に余裕がないのも事実で、この終わらない快楽地獄になんらかの形で終止符を打ちたかった。
つまり、はやくイキたかった。ということだ。
前立腺を刺激されるとこの上ない快感が襲ったが次第にパンチ力は薄れ、俺のどこかがもっと強い快感をねだっていた。(死んでも古泉に言うつもりはないが
穴にあてられた古泉のモノが俺をぐいぐいと押している。ぬるぬるしているのは先走りの液だろう。
そしてゆっくりと中へと侵入してくる。
指とは違う質量に俺は目を見開いた。めりめりと体が切り裂かれるような感覚に俺の体にも力が入る。
「…ん…もっと力を抜いてください。…き…つい。」
散々な目にあった分、いっそのこと引きちぎってやりたかったがそうもいかない。
俺は極力力を抜いて古泉を迎え入れたつもりだった。

「はぁっ…ぜん…ぶ…入りまし…た。」
余裕のない古泉の声。俺はなぜかその声が嬉しかった。いや別にほだされたとかじゃなくて。今まで俺がずっと劣勢だったからだ。
もちろん俺は古泉の倍余裕のない声を出していたわけだが。
お互い深呼吸して古泉が動き始める。最初はゆっくり。次第にはやく。激しく。
あまりの衝撃に俺の頭はパンク寸前。古泉の動きに合わせて規則正しく漏れる自分のあえぎ声はなんとなく滑稽だ。
俺はもうほとんど意識がなかったのかもしれない。そうでなければあんなことを言うはずがない。
気づけば俺は古泉の名前ともっとという言葉をうわ言のように叫び続けていた。無意識とは恐ろしいものだ。
「はぅ!あっあっあぁっこぃっこいずみぃぃ!!!!」
俺のものとは思えない一際甲高い声が出て俺はイッてしまった。古泉も同時だったのか、体の中に更に熱いものが染みとおる感じがした。

腹とズボンに自分の精液をたっぷりかけてしまい、俺は事後の荒い息を整えながらため息をついた。
明日も学校なのにどうしろというのか、この事態は。
脱力した体に鞭をうち、古泉の方を見やると古泉は古泉で壁に背をもたれさせ、荒い息を整えている。
目が合うとまるで山頂へ到着した登山家のような達成感溢れた満面の笑顔で俺を見ている。
なんだか気分が悪くなって目線を逸らした。
さて、この事態をどう説明してもらおうか。

「で、どうして俺にそんな不純な感情を向けるんだよ。」
とりあえず俺は古泉の服を借り、この突拍子もない事件の全容を解明することにしたのだ。(このまま帰れっか!
もちろん洗濯は古泉にまかせ、家では風邪をひいたと言って明日は休むことにする。
「男である僕に何故あなたへの恋または欲情という感情が生まれたのかということですか?」
古泉は俺の指の間をその長い指でゆっくりなぞりながら答える。正直少しゾクゾクするからやめろ。
「あぁ。もしかして…ハルヒか?」
このありえない事態はもしかしたらあのお気楽台風娘によって「やっぱり女子のファン層を確立するにはホモホモ要員が必要よ!」なんて言って引き起こされた可能性もあるのだ。
「そうですねー…。そう、かもしれませんし、そうではないかもしれません。」
しばらく考えた後に古泉はそんな曖昧な返事をした。
俺はもちろんその返答に納得はいかなかったが、とりあえず厳重な口止めを古泉に施し、その家を去った。
「僕としてはそうでない方が嬉しいんですけどね…。」
小さく呟いた古泉のその言葉を俺はしっかり聞いてしまった。
だから玄関を出る時に不意を突かれてされた軽い口付けと去り際の言葉が俺の心を揺さぶった。
布団の中で唇にそっと触れるとすごく胸の奥が熱くなるのを腰に残る重さと共に確かに感じた。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:17:50