さいもえ優勝 †
「よっしゃああああ! でかしたわよ古泉クン! これで我がSOS団の名誉と威厳が保たれたわ!」
ばーん! と机をひっぱたいてハルヒが叫ぶ。
「おめでとうございますうううううう! すごいですううう」
「……これも、未来の可能性のひとつ」
「全く見習いなさいよねキョン、でもあんたの散りっぷりは副団長の優勝の糧になったはずよね。さあ、皆祝杯よ!」
さりげなくひどいことを言われているような気はすごーーくするが、ハルヒの暴言はいつものことだからもういまさらどうでもいい。しかしそれでも俺が何も言わないのは、ちょっと驚いているからだ。
正直に言うが、ぶっちゃけ、負けると思っていました。いやむしろいつも思っていたんだが…。
相手が新世界の神のときはわーこりゃだみだwwとすら思っていたんだが……全く人生何があるかわからん。こいつらに関わって以降、俺はおどろきっぱなしでだんだんリアクションも少なくなってきた。このままいくと不感症だ。いやそれは違うか。
……ハルヒが祈ったから、なんて、まさかな。
まあ、少しは褒めてやる。結果は神のみぞ知る…とは言うものの、お前の人気は嘘じゃない。少なくとも俺は、そう思ってやる。
「で……、」
祝杯とやらのオレンジジュースを片手に、盛り上がる女性陣の絡みから逃れて一息ついた古泉が、にっこり笑って俺の隣に座る。ああ今日も近い近い。待て待て。
実は鉄面皮の古泉君だ。べったり張り付いた微笑みの向こう、内心どーなってんだかさっぱりわからん。が、雰囲気にのまれがちなのは俺だけじゃないだろう。その目が微かに興奮に揺れていることぐらい、これだけ近寄られれば俺にだってわかるぞ!
結果が出てンー分、まさに盛り上がりの最高潮です。そりゃ俺だって嬉しい。嬉しすぎて、ちくしょーやるじゃねえかと背中のひとつでもたたきたくなるくらいだ。いまさらなんだといわれても知らん。同じ馬鹿なら踊っとけ。
しかしまーなんですなー…別段外に向けての態度はかわっちゃいねえから、一人体育会系はできないってものだ。俺はオレンジジュースをひとくち啜り、冷静さを保ってやる。
しかしまーなんですなー…別段外に向けての態度はかわっちゃいねえから、一人体育会系はできないってものだ。俺はオレンジジュースをひとくち啜り、冷静さを保ってやる。
「……んーむむむ」
「……何か、言ってくれますか?」
「あー、まー、なんだな」
冷静ぶったせいで余計に気恥ずかしくなっちまった……。
「何のネタ振りですか」
でもまあなんだ。くす、と笑う古泉の顔が本当に嬉しそうで。この時間、この気持ち。この躍動感をともにした仲間だからこそ、わかっているはずだろ、古泉。
「……当然の結果だろ。うちの副部長なんだからな」
「ありがとうございます」
視線を合わせて、笑う。その笑みにひきずられるように、俺は、たぶん。今までよりずっと素直にこいつに向けて笑うことができたと思う。
心から、誇らしいぜ古泉。ありがとな。
「なぁーーーーにふたりで顔見合わせてにやにやしてんのよぉっ!!!私たちもいれなさいよぉっ!!」
ああ、ほら俺らの神様も、祝福してるぜ。言葉は悪いけどな。