契約愛人6(会×古)  第3章-1~

(会長モノローグ)

 一人住まいのアパートに、古泉はさほど沢山ではない荷物を抱えて越してきた。
 荷物の大半は洋服だ。趣味は色々あるようだが、あまり物に執着するほうでも無いのだろう。それとも大事なものは、彼が今まで住んでいた場所に置いてあるのかもしれない。
 古泉がどんな生い立ちで、どんな人物か、なんてことに俺はあまり興味が無い。
 そんなことはこれからいやでも知っていくだろうし、まずはこいつを怯えさせない、それが大切だろう。
 題して「古泉の飼い方」だ。

 まず古泉は「機関」とやらに矢鱈心酔している。俺との出会いからしてそれ絡みだ。
 SOS団という学内にいつの間にか作られたお騒がせ集団のリーダー格である涼宮とかいう女生徒のことも気にしているらしいが、それは片思いなどというわかりやすい話じゃないらしい。俺を無理やり生徒会長にしたのもその女生徒の為だというのだから、全く意味不明だ。
 そういうことに関しても、俺は全くノータッチだ。興味もない。
 教えてくれと言ったところで、あいつは誤魔化すだろうし、教えてもらったところで腹が膨れそうでもない。
 余計な好奇心は身を滅ぼすとも言うしな。
 ただ、その機関とやらに関係して、古泉は夜でも夜中でも、休日の昼下がりでも構わず、出かけていくことが頻繁にあった。出かけたと思えばしばらくたって、何事も無かったかのように帰ってくる。時々フラフラしていることもあるが、大抵は少し先のコンビニに出かけてきたかのような普段通りさだ。
 それについては一体何をしているのか、全く興味がないわけではない。
 だが直接尋ねたことは無かった。俺もまた生徒会の仕事がそれなりに面白くなり、ケンゼンナセイカツとやらに馴染みかけてもいたので、古泉がどこで何をしてようと、最終的に夜明けまでには俺のベッドの中に納まっていれば問題は無かった。

 夜中の三時を回った頃、玄関が開く音がした。
 なるべく物音をたてないよう気遣いながら扉を閉め、まだ制服を着たままの古泉が部屋に上がってくる。
 浅い眠りから醒めていた俺は、苦笑しながら声をかけた。
「お帰り」
「あ……すみません。起こしてしまいましたか?」
「いや……起きてた」
 上半身を起こす。肌寒さを感じる季節にはなっていたが、まだ服を着て眠る気分にはならない。
 古泉は鞄を提げたまま、奥の部屋へと姿を消した。その部屋だけ明かりがついて、暗い部屋に光が差した。
「一度も今日は帰らなかったのか?」
 呼びかけると、服を着替えているらしい衣ずれの音と共に、ええ、と返事がかえってきた。
「すみません。機関に顔を出して、それから話し込んでるうちに色々……」
 色々で午前3時か。突っ込みどころではあるが腹はたてるほど細かい性格ではない。最初の頃は、俺と過ごすのが嫌でわざと帰宅しないのかと疑っていた時期もあったが、そういうわけでもないらしい。
 スウェットの上下を着て戻ってきた古泉は、時計を見上げて少し考え込んでいる。
「風呂は朝にしろ。回りの部屋に迷惑だ」
「……そう、ですよね」
 苦笑して、少し戸惑いげにベッドに近づいてくる。シングルの狭いベッドで裸の俺と寝そべるのを毎回やつは躊躇して、必ず一度立ち止まるのだ。
 だから近づいてきたところで腕を引いて、抱きしめて引き寄せる。
 服の下に冷えた掌を差し入れて、敏感な部分をなでると「うわっ」と悲鳴がかえってきた。
 その声を聞くと何故か安堵した気分になるのは何故だろう。身をよじる古泉を俺はより一層撫で回した。
「……わっ……ちょ……んぅ……っ」
 右手はズボンの中に忍ばせ、生暖かなそこを撫でながら、左手で平らな胸を撫で突起をつまみあげる。古泉は顔をしかめて、無駄な抵抗と知りながら足をバタバタと動かして逃れようとする。
「も……や……駄目で……すっ」
「何がだ。こんな時間まで夜遊びしやがって。俺には我慢させてなんだその態度は」
「夜遊……びじゃな……」
 そんなのわかってる。古泉は想像以上に不器用で生真面目な性格だ。あのスカした仮面は機関員としての行動をとるためのものらしい。立ち位置から離れると、あっという間に俺のペースに巻き込まれてくれる。
 背中から抱きしめながら思う存分、俺は古泉を触れて楽しんだ。
 飼い慣らすように、触れて甚振って、耳朶を舐め可愛がる。
 少しずつだが古泉の中から俺への恐怖心は抜けているようだ。右手の中にある熱いカタマリが堅くなっていることが証拠だ。最初の頃はビクビクして見られたものじゃなかったしな。
 でもそこまでだ。
 俺は突然両手を離し、うろたえている古泉を腕で覆って抱きしめなおす。
 イくところが見たいとか、俺のを咥えさせたいとか、突っ込んでガンガンに犯してやりたいとか、そういう欲望は常に心の中にある。だが最初のアレがまずかった。レイプしようとして過呼吸起こされたアレが、はっきり言って俺のトラウマだ。どうにかしてやりたいと思うが、どうにも手が出せない。心で思うだけで留まってしまう。まったく忌々しい。
「……会長」
 腕の中で古泉が囁いて、もぞりと動く。
「なんだ?」
「いえ……」
 中途半端に元気にされて後始末にでも困ったか。恥ずかしそうに呟く古泉の額に口づけて、より強く抱きしめる。
 トイレ退出は認めない。朝までもじもじしれいればいい。
「……あ……あの……」
 体温の上昇した体を抱きしめて、意地悪な喜びに耽りつつ、俺は目を閉じた。
 しばらくもぞもぞと抵抗を続けていた古泉も、しばらくして諦めたように体の力を抜き、俺の腕の中で小さく溜息をついた。もしかしてもう収まったのかと気になって、膝で股間をつつくと、分かりやすい悲鳴が上がった。
「か……会長っ……だめ……っ」
「なんだ、まだ元気じゃないか」
 笑いながら両腕で拘束したまま耳たぶをはむはむと噛む。足をばたつかせて抵抗する古泉の首筋を舐めまくり、膝頭でぐりぐりと責めていると、必死で嫌がっていた上気した体から、やがて「あっ」と声が漏れ、ゆっくり力が抜けていった。
「ん?」
 ぴちゃりと喉を舐め上げながら、茫然としている古泉が途方にくれたような息を天井に向けて吐いたのを聞いた。
 ……ん? これは……。
 恐る恐る膝を再び進める。
「!!」
 古泉は猛烈に嫌がって、俺を両腕で押しのけて暴れる。
「……もしかして……イったのか?」
「…………………………」
 返事がない。しかしそうらしい。……きっとパンツの中はえらい湿度になっていることだろう。
 電気をつけていればよかった。表情を見損ねた。
 せっかくなので裸にむいて観察してみたくなったが、さすがに午前三時。眠い。
「着替えてくるか? 古泉?」
 耳元で囁く。返事はなかったが、捕まえていた腕の力を緩めると、あっという間に古泉はベッドの中から逃げ出し、隣の部屋に向かっていった。
「…………」
 しばらくしてシャワーの音が聞こえてきた。こんな時間にシャワーを浴びるとはヤケを起こしているな?
 眠気が波のように迫ってくるが、どんな顔で戻ってくるか気になって眠るのが惜しい。
 うつらうつらとしながら待っていると、やがて古泉は濡れた髪をタオルで拭いつつ、憮然とした表情で近づいてくる。
 布団を持ち上げて出迎えると、俺に背中を向けてベッドに腰掛けやがった。
「……怒ってるのか?」
「……いいえ」
 口調は確実に不機嫌だ。
 面白すぎて笑いがこみあげてくる。古泉は傷ついた表情で笑っている俺を見下ろすと、力いっぱい睨みつけてきた。
「笑い事じゃ……」
「もう遅い。意地悪はもうしないから、早く横になれ」
「………………………………」
 疑い深そうに見下ろしてくる古泉。まあ三回のうち二回は嘘をついているから当たり前だが、今夜は本当に眠い。
 濡れた髪のまま両腕の中に収まった古泉を包み込みながら、俺は再び目を閉じる。
 俺の胸に埋もれた古泉から聞こえてくる、小さな溜息。
 困りながらもやつは俺を少しずつ受け入れてくれている。そのことに俺は非常に満足していた。


 本当に欲しかったのは、古泉の滑らかな肌や、喘ぐ声、小さな悲鳴の筈だった。
 いけすかない美形を、追い詰め、追い上げて、懇願させて、甚振って、壊れるほどに犯したい、そう思ってた。
 けれど気づけば、そんなものよりも欲しいものが増えていた。
 甘え下手で、妙に義理堅い性格不器用な古泉の心ごと欲しくなっている。

 体を重ねれば満足ゆく筈だった。
 苛めて嫌がる顔を見れば、それだけで心地よくなれる筈だった。
 いつから古泉の温もりを恋しく思うようになったのだろう。
 なんだかね。……ヤキが回ったもんだ、と苦く思う。これもまたケンゼンナセイカツの一部なのかもしれないね。

→→つづき(契約愛人7)

  • 待ってました!!なにこのあまあまカップル。GJ -- 2007-11-18 (日) 13:23:59
  • 待ってましたー!!ドキドキしながら読ませて貰いました!会長が古泉に惹かれていく様が何とも言えなくて、会古が更に好きになりました。続きも正座してワッフル焼きつつ待ってます! -- 2007-11-19 (月) 01:53:11
  • 会長素敵…!続きを楽しみにしてます! -- 2007-11-19 (月) 19:37:04
  • やべえ会長好きになった!wワッホーワッホー -- 2007-11-19 (月) 21:07:36
  • 今回も萌えさせていただきました。古泉が身も心も陥落する日を楽しみに待ってますwww -- 2007-11-21 (水) 23:50:02
  • etQxTSKNCYLnYj? -- dvduthfgzzb? 2009-07-03 (金) 10:47:13
  • ehoJTxtWzNYsVtWd? -- hjgnjhpfepx? 2009-07-03 (金) 10:47:45


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Last-modified: 2009-07-03 (金) 10:47:45