●第6章-2
(会長モノローグ)
夕食後の片付けは古泉の役目だった。
別に決めていたわけではないが、夕食の後古泉はシャワーを浴びて、テーブルで勉強を始めるから、いつまでもそこが散らかっているのが嫌なようで、俺が食後の一服を楽しんでいる間にはいつも片付けを始めてしまう。
俺は宿題を含め、予習復習みたいなかったるいものは家には持ち帰らない主義だ。いつも古泉はなかなか帰ってこないし、生徒会室にいればそれなりに面白いやつらに会えるので、学校で時間つぶしにそれらをやって、買い物をして帰宅する。そして夕飯にたっぷり手間と時間をかけて作り出し、同居人が美味そうに食ってくれるのを楽しみ、食後はゲームをしたり雑誌を読んだり、だらだらと過ごすのが日課だ。
なんとなく出来上がっていた二人で暮らす暗黙のルール。
古泉を愛しく思う以上に、この生活を俺は気に入ってるのだろうと思う。
退屈極まりない日常。刺激といえば同居人を苛めることくらいしかないのに。
「あふっ……んぅっ」
ゲーム部屋の柔らかな絨毯の上に仰向けに寝かせた古泉を抱きしめ、丹念にキスを繰り返した。
夕食後にシャワーに逃げ込もうと考えていたらしいが、普段の癖で食器を片付け始めたのが運のつきだ。手首を捕まえ、隣の部屋に連行すると、すぐに降参して言うことを聞いた。
今日のやつは、妙に積極的だ。もともとキスは最初の頃からさほど嫌がることは少なかったし、舌を絡めさせれば体を熱くさせ感じ始めるのもいつものことだけれど、何か違った。
その何かが知りたくて、俺はわざといつまでもいつまでも口内を犯し続けた。古泉も負けちゃいないとばかりに応えてくる。
ほんとに……何があった、お前。
制服のシャツを着たままでいる胸元に掌を這わせる。服の上からでも固くなった乳首がすぐに指に当たった。
「んっ……ぅ」
びくっと大きく揺れる体。反応よすぎだ。
耳元で囁く。
「触って欲しい? 古泉」
「……ぃ……」
古泉は恥ずかしそうに視線を逸らした。何を恥ずかしがっているのかよくわからんがまあいい。
シャツのボタンを外し、掌を滑り込ませる。熱く上気した肌をゆっくり撫でると、「ああっ」と切なげな息を吐いた。
「会長……っ」
「どうした、今日は。……いつもより感じてるだろ?」
「わか、りません」
古泉は頬を染めて呟く。
「でも……そうかもしれません。……頭がぼうっとする……」
「そう」
俺は笑った。そして頭を巡らす。昨日久しぶりに犯そうとしたのが今頃じわじわ聞いてる?
それともやつの嫌いではないキスを長く続けたことが効を奏した?
多丸のやつに古泉を取り上げないでくれ、と頼んだことも関係しているのか?
シャツを腕から抜き取り、両手で隅々まで撫で回し続ける。古泉はより一層体を熱くして、自分から俺の唇に顔を寄せるくらいに感じていた。
くそ。可愛い。
苛めたい。
感度の高まった乳首をがりりと噛んで、悲鳴をあげさせたい。
後ろ手に縛って、俺のを咥えさせたい。
嗜虐的な妄想が頭の中をわんわんと蠢く。
でも。
ふっふっ、と短く息を吐いて感じている古泉が可愛くて、ほんと余計なこと出来ない……。したいけどできない。
自分の自制心に腹をたてながら、古泉のズボンのベルトを緩めると、あっ、と微かな声が漏れた。
「触って欲しくないの?」
「……それは……」
かなりやばくなってる筈だろ。返答を待たずにジッパーをおろし、ズボンをおろして下着の上からなぞる。
「あああっ」
叫んで古泉は俺に抱きついてくる。よほどいいってことらしい。
「触って、って言ってごらん。そしたら気持ちよくしてやるから、古泉」
「……えっ」
古泉は潤んだ目を細めて困ったような顔を作り、それから俺を見上げた。
「……って下さい」
「ん?」
「さわっ……て下さい」
「了解」
俺は下着の中に指を滑らせる。熱いカタマリと化しているやつのモノを引き出し、掌で包む。
「ぁぁんっ」
甘い声を響かせる喉を甘噛みして、俺はあいている手で床にへたりこんでいる古泉の右手をとった。
「古泉、俺のも触って……くれるか?」
「えっ?」
予想もしてなかったって顔をするなよ。全く。
「入れないから……俺のも気持ちよくしてくれよ」
「……」
暫く逡巡した後、古泉の手がゆるゆると俺のズボンに伸びてきた。待ちきれずに自分でズボンと下着を下ろし、古泉に握らせる。細い指が絡みついてくると流石に俺でも目の前がくらくらする程の快感があった。
「気持ち……いいですか?」
「当たり前だ」
キスをして、古泉のをさすりあげる。茎をしごき、先端の割れ目をなぞり、玉も揉みしだく。
「あっ……あっ……やっ……あっ」
指の動きにあわせて古泉の体がびくびくっと震えて、予想よりもやつはあっという間に達してしまった。
よほど感じていたのか。可愛いけれど、俺のはまだ全然なんだよな。
自分だけイったのを申し訳なく思ったのか、それから古泉は右手に握った俺のを一生懸命しごいてくれた。
触れなれてない他人の男のブツを相手にすることに緊張しているのが、指先から伝わる。十分それだけで心地よかったが、悪いが今までのお前のおかげで俺の我慢スキルは相当なものに仕上がっている。
古泉の吐き出したものを指にたっぷりとつけて、足を開かせると後ろの穴に人差し指を差し入れた。
「いやっ……そこっ」
途端に反応して体を硬くするのを、宥めるようにまたキスを繰り返した。
「指だけだって」
「……え、……ええ」
「お前が早くいかしてくれたら、やめてやるよ」
ついでに加えた言葉を本気にしたらしく、古泉の指の動きが早くなった。うおおお。ちょっとやばい。
だがその動きにあわせて、俺も指をせわしなく動かす。濡れた指がじゅぽじゅぽといやらしい音をたてて、古泉は恥ずかしそうに顔を俺の胸に伏せた。
……あー、もうー、ほんとに可愛い。犯したい。抱きたい。泣かせたい。
しかしここが我慢スキルの見せ場だ。
指を回転させて、内壁を擦りあげる。肩がびくりと震えた。
「少しは……気持ちいいか?」
尋ねると微かに頷いた。素直に頷くとはいやはや珍しい。
ご褒美に指を二本に増やしてやろう。……猛抗議のつもりか左手で何度もぶたれたが気にしないさ。
だが自分でもこの辺りが限界だと分かった。穴が狭い。広げるように指の腹で内側を撫でていって少しずつ慣らしたが、古泉の目からはそれだけでもきついらしく涙がぽろぽろと零れ落ちた。でも泣きながらも俺のを一生懸命擦ってくれる。
「体の力、抜けって……怖がらないで」
優しくキスをしながら囁く。
「え、ええっ。……でもそこは」
「気持ちよくなる。任せろ」
「……うう」
まったくその不安がわからんわけではないから宥めながら、抜き差しを繰り返す。
古泉がくれる刺激に俺の頭も朦朧としてきてるから冷静とはいえないが、なるべく無茶な動きはしないように丹念に繰り返していくとやがて柔らかく蕩けるようになってきた。
そして体の反応はそのまま古泉の反応で、うっ、とか、あっ、とか可愛らしい喘ぎを身を丸くしたまま呟きはじめる。
「……よくなってきた?」
「わ、……かりません」
そうですかそうですか。
ああもう、でも我慢スキルもそこで限界だった。古泉の指の中にあったそれが弾けて、シャツをはだけさせた胸元に勢いよく吐き出してしまっていた。
「うわっ」
「驚くなよ。お前も一緒だろっつーの」
飛び散った雫に驚いて固まる古泉の髪を撫でながら苦笑する。
「いえ、……会長がイくところ、初めて……見ました」
「そうだったか?」
「ええ……」
思い起こせば数ヶ月前、古泉にイマラチオさせた時ぶりか。そりゃそうだな。
「……我慢……していたのですか?」
精液まみれっていう実にいやらしい姿のまま、古泉が不思議そうに問う。シャワーに早く送り込まなくちゃ俺がやばい。
そこらのティッシュを引っ張り、古泉の体を拭きとりながら俺は嘆息した。
「別に? 一人でしたり、我慢したり色々だ」
古泉は体を起こした後、急に深々と頭を下げた。
「……すみません……」
「な、なんで謝る」
「いえ……僕はあなたが困らないように……ここにいたのに……なんていうか」
「そうか」
俺は苦笑した。そんなのお前と一緒に暮らすという前から分かっていたことだけどな。
今まで自分ばかりが触れられて、俺の手でイかされていたことに、いまさらながらに申し訳なく思う気持ちが芽生えたらしい。
「別に気にしちゃいないがね」
俺は立ち上がった。それよりシャツもズボンもはだけたまま反省されるのは、実に心臓に悪い。
自分が止められなくなる。ああもう。
「……こ、これからは……」
床に座った古泉が立ち去ろうとする俺の背中に何か言った。
「ん?」
振り返ると、真っ赤な顔の古泉が俺を見上げて真剣に告げてくる。
「善処します……から」
「おいおい」
そんなこと言われたら、もうニヤニヤ笑うしかないじゃないか。そしてつい時計を見上げた。
まだ夜の九時を過ぎたばかり。
ああもう、夜はまだまだこれからいうのにそんなことを言ってくれるなよ。
全く……。
→→つづき(契約愛人15)