国谷 夏服と暑さと着崩し

 

今日は暑い。
だからキョンはいつもより制服を肌蹴させている。
去年の今頃は谷口もキョンに負けず劣らずネクタイを緩めていたわけだけれど、今年はそうはいかないみたいだ。
原因は何かと言うと何を隠そう僕である。
僕は谷口にずっと所有印を付け続けている。
想いが通じ合ってもそれをやめる気にはならなかった。
僕は独占欲が強いタチだからね。
だから谷口は他の人には見えないようにあまり着崩していないってわけ。
それでいい。
夏服の谷口も可愛いけど、その可愛さの本領を発揮するのは2人きりの時だけでいいんだ。
腕が見えてしまうのは仕方ないことだと諦めているよ。それくらいはね。
それに暑いのに我慢している谷口を見るのもまた一興だしね。
少し汗ばんでいるのを見るとついニコニコしちゃうね。
キョンは谷口に、お前制服着崩さなくなったな。なんて言っている。そういうところにはやっぱり気付くんだなぁ。鈍感なくせに。
谷口は少し焦っていたけれど、そうか?なんて言ってはぐらかすことを覚えたみたいだ。
なんとなく残念だと思ってしまう自分がいるけれど、まぁ、好ましい事態だと言える。

そんなことがあった日の放課後。
僕の家に谷口が来ることはすっかり日課になっている。そして今日もまた谷口は僕の家に来た。
「あ~、あちぃ」
谷口は着いてすぐにネクタイを弛めてボタンを外している。
ん?誘っているのかな?
「ち、ちげーよ!!暑いんだよ!」
うん、わかってるよ。顔が赤くなったキミは可愛いからね。それが見たくて言っただけ。
それにしても、今の谷口を見ていると着崩すのは2人きりの時だけでいいと改めて思うよ。
「なぁ、コレ付けんのやめてくんねーか?暑い」
あ~、やっぱりそれを言い始めちゃったか。
夏服になったことだし、もっと着崩したくなっちゃうかなぁとは思ってたんだよね。
でもダメ。
谷口の首筋に口を寄せる。まだ色は残っていたけれどもっと色濃く痕を付ける。
これで明日も着崩せないね。
「おまえ…人の話聞いてんのか?」
怒らないんだね。呆れてはいるようだけど。
「なんか、おまえを怒ってもムダのように感じてきたからな。あーあ」
明日も天気予報じゃ暑いって言ってたのによ…と文句を付けている。
「ごめんね?」
「そんな笑顔で謝られても…どうせ反省してねーくせに」
はは、ばれた?
「ったくよー。おまえにも同じ思い味わわせてやろーか」
ん?それはどういう意味だい?
「だから、おまえも暑くても制服着崩せないようにしてやろうかって…あれ?」
それはどういう手段でかな?とても興味深いね。
「え、えーっと。だから…」
お誘いの言葉でいいってことかな?
「なんだよ!なんでうれしそうなんだよ!着崩せなくなってもいいって言うのかよ!?」
愚問だね。
僕はもともとそんなに着崩さないし、もし谷口が僕に『自分のもの』っていう印を付けたくなったのだとしたら、それを断る理由なんてひとつもないに決まってるじゃないか。
僕の体に谷口の所有物だという印が付けられるなんて嬉しいに決まってる。
キスマークって独占欲が形となって現れているような気がしないかい?僕は谷口の独占欲ならいくらでも受け入れてあげられるからね?
さぁ、どうぞ。
おもむろにネクタイを取ってボタンを外していく。
「え、マジで?本気か?」
本気に決まってるじゃないか。シャツを放り捨てる。
おずおずと谷口は僕の首元に顔を埋める。
少し戸惑っていたけれど一度生唾を飲み込んだ音がしてから鎖骨辺りに鈍い小さな痛みを感じた。
すごい快感だ。
谷口が僕の体に痕を残すなんて。
「はぁっ」
谷口が僕の体から顔を離す。どうやら終わった様だ。
少し息が上がって顔を赤らめている顔を充分に堪能してから鏡の前に行って見てみる。
うん。綺麗に付いてる。
「良く出来ました」
谷口の方に向き直って言ったけれど、当の本人は僕の体を直視出来ないようだ。
自分の痕が残っているとか考えて恥ずかしがっているんだろう。
ふふ、可愛いなぁ。

「今日、親帰ってこないんだ。僕、機嫌いいし、たっぷり可愛がってあげるからね」

次の日、谷口はいつもより気合を入れて制服をきっちり着ていた。
僕は少し着崩していたら「何考えてんだ!?」と言われてボタンを掛けられネクタイを締められた。
世話焼き女房っぽい谷口か。…うん。こういうのも悪くないね。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:18:54