国谷 ハジマリ

 

「ねえ、谷口ってさキョンのことが好きなんだよね?」

普通の友達関係が終わった瞬間。
欲望が渦巻いた奇妙な友達関係が始まった瞬間。
「はあ?まあ、あいつは変だが面白い奴だし付き合いやすいし…」
谷口は平静を装って理論で武装。
「そうじゃなくて、恋愛感情で」
いつもの穏やかで柔和な声じゃなく、無機質な声で圧倒的な存在感を醸し出しながら言う。
問い詰める…と言った方が相手から見たら表現は合っているかな?
ああ、驚かせてしまったね。
こんな声を聞かせるのは初めてだもんね。こんな表情を見せるのも。
でも、こんな僕の本性を見せるのは特別気に入った人だけなんだよ?
そう、今のキミみたいに。
そんなに脅えないでくれよ。もっと脅えさせたくなるじゃないか。

「気付いたんだ。谷口ってさあ、朝比奈さんとかと仲良くしてるキョンにやきもち妬いてるんじゃなくてキョンと仲良くしてる朝比奈さんや涼宮さんに嫉妬してるんでしょ?」
「おま…何言って…」
ああ、どうして気付いたんだって顔をしているね。
それはね?僕がキミのことが好きだからさ。言ってあげないけど。
キミを目で追っていたらキミの視線の先にはキョンがいるんだ。
いつもいつも。
僕には目もくれないでキョンのことばかりを追っている。
嫉妬の目を向けるのはキョンと仲の良い女の子にばかり。
僕の方がいつも近くにいるのにね?
僕の気持ちには全く無頓着。
そんな悪い子にはお仕置きが必要だとは思わないかい?
ねえ、谷口。
ドンッと壁に押し付け唇を奪う。
苦しげな吐息が混じっているけど放してなんかやらない。
慣れていなさそうな息継ぎ。初めてだったら嬉しいな。占有欲が満たされるからね。
まあ、初めてじゃなくてもすぐに僕色に染め上げてみせるから何も心配はしていないけどね。
ガリッと唇を噛まれる。
口内に血の味。鉄の匂い。ちょっと痛いね。
その強気さに免じて少し解放してあげる。
ああ、目を見開いたキミも素敵だね。苦しげなキミも素敵だね。
でも、僕にこんなことしたからにはもっとお仕置きが必要だね?
唇から流れる紅い液体を舐める。この時の僕はきっと壮絶な笑みを浮かべていただろう。
脅えが色濃く混じるその表情も素敵だよ。
僕にもっといろんな表情を見せてくれよ?
これからずっと。
まずはこの一言をキミに与えよう。

「キミの気持ち、キョンには言わないよ。その代わり…ね?」

あぁ、いいね。その表情も。ゾクゾクするよ。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:18:53