古泉&キョン  レンタルキョン君一泊二日

 

いつの間にか「閣下」に書き換えられた腕章をつけて、我軍の絶対君主殿は高らかに宣言する。
「いっよいよ週明けには決戦ね!!みんな、張り切って行くわよぉ!!」
本日は土曜日、かのけったいな宣戦布告から数えて6日。
ようするに次の月曜がゲーム対決の日である。
「明日はゆ〜っくり休んで、英気をやしなっておくのよ!!
 〜〜…っかぁ〜〜〜!!いいわねこの空気!ワクワクするわ!」
あ〜、はいはい。ったく、こっちは気が気じゃありませんよ…。
まぁ勝つ気も無いことですし、明日はせいぜい嵐の前のなんとやらを楽しみましょうかね…っと、おい何だハルヒその顔は。
「もおおぉぉ!!キョンは相変わらずやる気無しの駄目駄目ね!!…そうね、前言撤回!
 キョンは明後日までに、…そうね、銀<ピーー>伝説とか宇宙船<ピー>マトとか見てスペースオペラ気分を盛り上げる事!あとで感想レポートも書いてもらうからね、絶対見とくのよ!!」
ハルヒの台詞の最後に、長門のノートパソコンを閉じる音が重なる。
それはすなわち本日これまでの合図で、俺には反論の余地は無いって事だ。…はいはい。
帰りにレンタル屋によって見ることにした俺は、「SFアニメ」と書かれた棚の前で途方に暮れていた。
作品数も巻数も結構あるもんなんだな。…で、なんで当然といった顔でついてきてるんだ古泉…
「で、あ〜…コレは、時系列的に後なのか先なのか。それとも放映順に見たほうがいいのか??」
何だって同じ作品のシリーズだろうに、どっちが先だかわからん風になってんだ。
明らかに絵が違ってるのもあるしなぁ…
「お勧めは、テレビ放映順ですね。平成リメイク版と原作でしたら、旧版からみて、アニメの進歩を見るのもまた一興ですね。
ああ、こちらは人気が出たキャラクターのスピンオフ作品ですよ。時系列的には本編より前の傭兵時代が描かれてるようですが、原作とつじつまが合わないところもあるので、これも後から見たほうが良いかもしれませんねぇ…」
いやに詳しいな、古泉。…どうでもいいが、後ろに立つな、肩口から覗き込むな、息がかかる気持ち悪い。
身をずらして隣の棚を見る。あ〜もうススっと背後に回るな鬱陶しい。
「ネット上に判りやすく放送順にならんでアップされてる場所もあるようですが…、
まぁテレビ画面よりは小さくなりますが(二人で)見れないこともないでしょう?あなたはそういったものは利用しないのですか。」
だから耳元で喋るな心臓…気持ち悪い。
それになんだその小声の(二人で)は。何が悲しゅうて野郎同士額つき合わせてパソコン覗きこまにゃならんのだ。
しかもこのシリーズ結構話数あるんだぞ?大体お前は口ぶりからしてこのシリーズ全部見たんだろうが。
俺に付き合おうとする必要性がわからん。さらに付け加えるなら、うちのパソコンは低スペック遅回線だ。
そして俺はアニメや映画は菓子でもつまみながらソファでごろごろ見るのがすきなんだ。
詰まるところ、お前の案は却下だ。ドゥーユーアンダスタン?

一息に言って間合いを取る。お前はいちいち近すぎる。

「おや。…つい、良く聞こえるようにと近くに寄ってしまったようですね。
 …ですが、少しこの距離は離れすぎなんじゃないでしょうか。こんなに離れてしまっては、声のトーンを上げるを得ません。こういう場所でそれはマナー違反になりかねない。だからせめてこの位の距離は保ちたいですね。」
お前のは近すぎるんだ。…一度お前とは多少の声の騒音公害と、野郎同士の異常接近による視覚暴力はどちらがよりマナーが悪いかについて論議しなきゃならんようだな。
…判った、隣に立つのは許可しよう。背後には回るな。
「了解しました。で、一緒に見る件につきましては、僕がこの作品を見たのはだいぶ前、記憶もおぼろげです。
これでは涼宮さんのお気に召す対応が出来ませんから。レンタル代も割り勘に出来ますよ?上映会場には僕の部屋を進呈しますよ。貴方のご希望のソファもありますし。」
むぅ…それは、ありがたくなく、もない…気がする。この巻数を借りるとなると、結構でかいしな…。しかしお前んちか…
どうします?と首を小さく傾げる。そして、唐突に、もう一つの懸念事項を思い出した。



ったく、茶くらい出るんだろうな。…それと、明後日の数学で当たる予定だから、それもついでに教えろよな。


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Last-modified: 2008-01-30 (水) 23:18:35